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猫と庄造と二人のをんなのzhenli13のレビュー・感想・評価

猫と庄造と二人のをんな(1956年製作の映画)
3.7
学生のころに原作を読んだと思う。谷崎らしい変態性がそこはかとなく感じられたという朧げな記憶。
本作は森繁、山田五十鈴、浪花千栄子、猫という芸達者夢の競演といった風情。そこに清純イメージを払拭し闊達に手脚を投げ出しまくりモノを投げまくる香川京子が違和感なくいきいきしている。香川が森繁に喧嘩をふっかけるシーンはズームイン/アウトを伴うホン・サンスばりの長回しでビール瓶も小鉢も投げられる。
唐突なクローズアップ正面ショットの切り返しはどうかと思ったが、海の近い雑貨屋の軒下から白飛びする街道を臨むショットがたびたびあり印象的だった。
大雨が吹き込む玄関での山田五十鈴と香川京子のキャットファイト、ずぶ濡れになりながら猫を抱きしめる森繁、それまで飄然とポップだった芥川也寸志の劇伴は不協和音を滲ませ、狂気にも似た不穏さを残す。
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