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JAWS/ジョーズのYYamadaのレビュー・感想・評価

JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)
4.0
【監督スティーブン・スピルバーグ】
第3回監督作品
◆ジャンル:  
 パニック・ムービー、冒険映画
◆主な受賞歴
 第48回アカデミー賞
 作曲賞、音響賞、編集賞

〈見処〉
①パニック映画の金字塔
・『ジョーズ』(原題: 『Jaws』=両顎)は、
スティーヴン・スピルバーグ監督により、1974年に出版されたピーター・ベンチリーの大ヒット小説を原作とした、1975年に製作されたアメリカ映画。
・本作の舞台はアメリカ東海岸に位置する、観光地アミティー。その平和な田舎街の浜辺に女性の遺体が打ち上げられる。
・女性の死因をサメの襲撃だと判断した新任の警察署長ブロディ(ロイ・シャイダー)は、海岸を立入禁止にしようと提案するが、町の有力者達は夏の観光シーズンの収入打撃を恐れ、その提案を拒否。ついには海水浴をしていた少年が第2の犠牲者となってしまう。
・ブロディは、鮫の専門家で海洋学者のフーパー(リチャード・ドレイファス)、荒くれ者の漁師クイント(ロバート・ショウ)の3人にて、体長8mの巨大ザメの死闘に向け、大海原へ乗り出した…
・本作は、B級作品分野にあったパニックムービーを一躍娯楽作品のジャンルに昇華させ、半世紀経った現在でも、多数の同ジャンル作品に影響を与え続けている大傑作である。

②スピルバーグ28歳の演出
・『続・激突!/カージャック』の次回作を決めかねていたスピルバーグは、同作プロデューサーのデヴィッド・ブラウンのデスクから出版前の段階のゲラ刷りを見つけ、目を通した。そのタイトル『JAWS=ジョーズ』に興味を持ったスピルバーグは、ブラウンに「とにかく『激突!』を見て欲しい。陸上の『ジョーズ』だから!」と、監督を務めることをアピール、本作の監督に抜擢される。
・なお『ジョーズ』と『激突!』は、平穏な日常を破壊する巨大なモンスターという点で類似性があり、トレーラーが崖から墜落するシーンとジョーズが死ぬシーンは、同じ効果音が使用されている。
・脚本は未完のまま撮影が始まり、原作者と衝突しながらも、スピルバーグは「恋愛要素の排除」「劇中半ばまでジョーズを見せない」「重視キャラクターの生死の変更」「映画らしい派手な決着」を勝ち取っている。
・しかしながら「ブルース」と呼ばれた、機械仕掛けのジョーズ・ロボットを海中テストせぬままクランクインしたため、故障により、撮影は予定を大きくオーバー。当初計画に2倍の撮影期間、3倍のコストに膨れ上がった。
・一時は撮影中止のリスクがあった同作であるが、ロボットが壊れた副産物としてサメの全身描写が大幅に減少、より恐怖を増す結果となった。
・そのような環境下にあったスピルバーグに対して最大の援護者となったのは、作曲家のジョン・ウィリアムズ。ジョーズの登場シーンに流れるテーマ音楽は「究極のネタバレ」となりながらも鑑賞者はジョーズの姿を想起することが出来、イマジネーションが視覚を超えることになる。耳で見る映画…は言い過ぎかもしれないが、スピルバーグとジョン・ウィリアムズの初めてのシナジーにより、スピルバーグ作品初のアカデミー受賞に至っている。

③映画を変えた!社会を変えた!
・本作は、当時『エクソシスト』(1973)が保持していた世界歴代興行収入1位の座を奪取。『スター・ウォーズ』(1977)に王座を明け渡すが、のちに2作(『E.T.』『ジュラシック・パーク』)にて、スピルバーグは同座を奪還している。
・本作により、非英語圏では両顎を差す「Jaws」が「shark」に替わり、「サメ」して認知され、単語の意味を変えた。(『エイリアン』にも同様事例あり)
・1915年に開業したカリフォルニア州の「ユニバーサルスタジオ・ハリウッド」の目玉アトラクション「トラムツアー」に採用。その後、ユニバーサルスタジオは、『E.T.』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ジュラシック・パーク』などスピルバーグ作品のアトラクションにより、テーマパークのバリューが拡大。結局のところ『ジョーズ』のヒットがなければ、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の開業はなかった(はず)!!
・なお、USJの「ジョーズ」アトラクションは、本作の舞台アミティーをモチーフにした港やボートハウスの建物が並び、クルーから「過去にアミティに凶暴なサメが出現した」の説明から、本作の後の世界観であることがわかる。

④結び…本作の見処は?
○: 前半1時間は、巨大ホオジロザメは姿を現さず。J.ウィリアムズによるテーマ曲とのシナジーを味わいたい。
○:「安全管理」と「社会経済」の究極の選択は、パニック映画の模範的描写。現在の「コロナ禍」と同じである。
○: 小型船「オルカ号」船上の歓談シーンを中心とした主要キャスト3人の冒険映画として堪能したい。J.ウィリアムズによるテーマ曲の中盤は『スターウォーズ』や『E.T.』のように冒険心に溢れている。
○: ラストシーンね大爆破には、ヒット作の説得感がある。
▲: 終盤の巨大ホオジロザメとの格闘シーンは少々間延び感あり。
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