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JAWS/ジョーズのtakのレビュー・感想・評価

JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)
5.0
小学校高学年の頃。観たことないくせに、すげえ映画を撮るスピルバーグって監督がいる、と既に意識していた。強烈なインパクトがある「ジョーズ」や「未知との遭遇」のポスターを眺めながら、どんなんだろ?と心惹かれていたのだ。数年後の1980年には新作公開され映画館に出かけた。僕の初スピルバーグ映画は、幸か不幸か「1941」w。その年に「未知との遭遇 特別編」を映画館で、「激突!」をテレビで観た。大出世作「ジョーズ」を初めて観るのはその翌年の冬、家族が寝た後、地上波の深夜映画だった。「1941」の冒頭でセルフパロディにした、「ジョーズ」のオープニングシーン。浜辺を走り、服を脱いだ彼女は海へと泳ぎ出す。これがオリジナルなのかっ!怖っ!すげぇ!少年は映画を賛美する言葉をテレビに向かって発してしまいそうになる。
「ハーリウーーッド!」
※「1941」観ればわかります

いやはや、噂には聞いてたけど、そこらのホラー映画よりも怖いのにめちゃくちゃ面白くって、恐怖にドキドキするのに、次の展開が待ちきれなくてワクワクしてしまう。こんな映画があったのか。少年はブラウン管テレビの前、クッションを抱きしめながら最後まで観た。いや、すげえもんを観た。興奮気味の少年は眠れなかった。夢にサメが出てきそうだったのもあるが(笑)。2024年5月、あの頃と違って眠れなくって、BS12を録画していた吹替版で久々の再鑑賞。更年期なんだろか💧

スピルバーグの見せ方のうまさ。今観てもまったく色あせない。簡単にはすべてを見せずに、間接的に恐怖を煽ってくる。噛み切られて浜辺に打ち上げられた手、海底に落ちていく足、血に染まる水面。そして何よりも水中から海水浴する人々を見上げる主観移動ショットが見事。ユニバーサルホラーの傑作「大アマゾンの半魚人」を観て思いついたと聞く。サメが迫ってくる恐怖を、観客をサメの視線にして感じさせる斬新な発想。そんな少しずつ迫るものを見せていき、ジワジワと怖がらせていく手法は、後の「ジュラシックパーク」でさらに巧みになっていく。僕ら世代は、スピルバーグがビッグネームになっていく様子を同時代的に追っかけられた。それはいち映画ファンとして素敵なことだ、と今にして思う。

初めて観た時は印象に残らなかったが、改めて観てグッときた場面がある。ロバート・ショウ演ずるクイントが、戦時中にサメに囲まれて仲間が次々と死んでいったと語る場面。歴史上の出来事や科学と結びつけることで、映画を観ている自分たちとどこか地続きの話だと認識させて恐怖を高める演出は、様々な映画で使われる。隕石が地球にぶつかる話にしても、核実験で怪獣が目覚める話にしても。「ジョーズ」に挿入されたこの場面では、戦時中に原爆を運ぶ極秘ミッションに携わった帰路に体験した惨劇が語られる。観客の受け止め方によっては、その挿話が大量破壊兵器に関わってしまった呪いであるかのようにも思えてしまうかも。また、クイントにとって今回のサメ退治は逃れられない復讐なのだと、僕らに納得させてくれる。部屋にかけられたサメのアゴの骨が、過去に取り憑かれた男だったことを物語るのだ。そのアゴ骨のフレーム越しに出航するオルカ号が映される。ちょっとしたショットなのに、すごく意味深に見える。

そしてクライマックス。ブロディが一人で立ち向かう場面は、海の上では役に立たなかった男がことを成し遂げる。これも一つのカタルシス。巧いよなぁ。
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