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小島(こじま)の春
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『小島(こじま)の春』に投稿された感想・評価

Kuuta

Kuutaの感想・評価

3.0
ハンセン病患者に対する無根拠な隔離政策を喧伝したプロパガンダ映画である。1940年度のキネ旬邦画1位。洋画の1位がリーフェンシュタールの「民族の祭典」だった事からも時代感が窺える。映画の内容に入る前に、前提知識をいろいろ書いておく。

(戦時下のキリスト教会がハンセン病患者をどう扱ったかについて関心があり、ちょこちょこ本を読んでいる)

ハンセン病患者の隔離と、戦時下の国威発揚政策は深く結びついている。外見に症状が現れる事、栄養環境の悪い「後進国」に感染者が多い事から、日本政府は患者を「日章旗の汚点」と捉え、外国人の目の届かない国立療養所に片っ端から送り込む、という方針をとった。

当時は治療薬がなく、「10年かけて一箇所に集め、10年かけて患者を全滅させれば、日本から菌がなくなる」という考えがベースにあった。患者は次々に違法な断種、堕胎手術を受けさせられ、療養所には多くの胎児の標本が残された。

行政や警察、住民による密告が連動し、各地の寺などにあったハンセン病患者のコミュニティが「摘発」されていった。行政は「無らい県運動」と銘打って、療養所への収容率を競い合った。特に、皇紀2600年とされる1940年には、「一万床運動」の名の下に多くの患者が療養所に送られ、「健全な県」の達成が進められた。

政策そのものの是非を問わないまま、一人一人がお役所仕事的に動いた結果と言える。人を人として扱わずに菌の媒介者とみなす点、官民一体となって感染者を迫害する点など、100年近く経ってもこの国はあまり変わっていない。

より根深い問題が、こうした政策は上記した有形力の行使だけでなく、国民のハンセン病イメージの変容も同時に進めた点にある。キーパーソンは貞明皇后(大正天皇の妻)。彼女がハンセン病患者に寄付をした、という話を軸に、隔離政策は「天皇家による患者の救済である」という物語化が図られた。

誤った医学知識と、明らかな人権侵害がベースにあるにも関わらず、隔離は慈悲であり救いである、という認識が広がった(「隔離されて当然」という偏見は今なお残る。療養所の人々は病気が完治しているのに、故郷の家族に迷惑がかかるのを恐れ、退所が出来ず、同じ墓にも入れない)。

ここに接近したのが、キリスト教(日本聖公会)だ。宣教師たちは早くから病院を建てるなど国内でも患者を支援してきた。しかし、敵性国家の宗教として活動が難しくなる中、日本聖公会は無らい県運動を始めとする国策に積極的に加担。患者を治療する一方で、「恐ろしい伝染病」という偏見を社会に植え付け、療養所送りを正当化する広報役を務めた。

右傾化が進む当時の日本において、「天皇の救済」と「神の救済」をごちゃ混ぜにする事が、キリスト教が生き延びる道だった、と見ることも出来る。

さて、ここでようやく映画の話に入る。今作は「救らいの天使」と呼ばれた医師で、クリスチャンでもあった小川正子の手記の映画化である。献身的にハンセン病と向き合う姿を広めた作品としてヒットした。今作が一万床運動の進められた1940年公開であることからも、貞明皇后をモデルとした「女性がハンセン病患者に尽くす美談」が国民の共感を呼び、無らい県運動の活発化に寄与した事は想像に難くない。

(ちなみに当時の医師は「救らいの戦士」とも呼ばれた。病気との戦いを戦争に見立て、医療従事者に協力しない人を非国民扱いする。これも見たことがある光景)

岡山県の国立療養所「長島愛生園」で勤務する小川が、瀬戸内海や四国を旅し、さまざまな患者と出逢いつつ、療養所に来るように説得するお話だ。

・一番気になったのは中盤に入る長島愛生園のシーン。患者の境遇を読んだ短歌を連発し、理想化されたイメージ映像で園の様子を描く。違法な断種手術が繰り返され、劣悪な生活環境に患者のハンストまで起きた実際の雰囲気は伝わってこない。

・遺伝性ではないと明言しつつ、当時否定されている胎盤感染の可能性に言及。「治るのか?」という問いに「良くなることもある」という確信犯的な曖昧な回答。一度療養所に行ったら、故郷には二度と帰れない、という当時の常識がぼかしてあるのも不親切。

・家族と患者を引き離す終盤、説得役は小川から村長や警察官に移る。彼女は権力側に立つ「お上の人」に過ぎない。ラストの表情はそうした葛藤、あるいは無力感の表明だろう。しかしいずれにせよ、彼女が無責任な傍観者であるという印象は拭えない。患者の姿をまともに映さないこの映画同様、ヒューマニズムに基づき、相手に寄り添って救済を試みる姿勢を欠いている。

・親子の悲劇の別れ、子を思う故に離別を決める父という人情話にコーティングされているが、「お国のために身を差し出せ」という構図に変わりはない。公権力をチラつかせつつ、同調圧力によって屈服させる。村民総出で患者を島から送り出すラストは、出征兵士の見送りと完全に同じだ。
Hiroking

Hirokingの感想・評価

3.0
〖1940年代映画:手記実写映画化:東宝:日本映画傑作全集〗
1940年製作で、小川正子の同名手記を基に実写映画化らしい⁉️
在宅らい病患者を国立療養所に、収容する旅を記録した作品でした。

2023年1,966本目
Omizu

Omizuの感想・評価

3.3
【1940年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
『夫婦善哉』『恍惚の人』などの豊田四郎監督が小川正子の同名手記を映画化した作品。

まずこれがハンセン病についての映画だということを全く知らなかったので驚いた。

一旦この映画が持つテーマ的危うさは置いといて映画としてみると、元の手記をどの程度脚色しているのか分からないが、よくできていると思う。夏川静江演じる医師とらい病患者とその家族の交流、村人たちとの関係を上手く描いている。

島の美しい景色や文字の表現、モンタージュなどの技法を用いて飽きさせない映画になっている。

一方でこの元の手記やこの映画自体、無らい県運動に加担したという批判もある。無らい県運動とはらい病患者を故郷や家族から引き離し、専門の病院に隔離する政策のこと。

実際この映画でも病院はユートピアで、行かないのは我儘だという価値観があるようで背景を知らない人が見ると間違った先入観や差別意識を持つ恐れがある。今ではハンセン病は特効薬があり治る病気であり、感染力自体も非常に弱い。

ただ、豊田監督はらい病患者の家族の哀しみに焦点を当てているようで、隔離政策万歳!という姿勢ではないように思える。

ただやはり背景知識や最低限の情報がないと誤解する危険性のある映画なので、スコアとしてはこれくらい。注意も込めて。

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