モカ

風が吹くときのモカのレビュー・感想・評価

風が吹くとき(1986年製作の映画)
3.7
可愛らしいタッチの絵とは裏腹に、内容は核ミサイル投下に対する一般市民の日常。とても辛辣。恐ろしいです。

どこかで見た事のある絵だと思ったら、描いてるのはスノーマンの作者か☃️
もともとは絵本だったのかな?痛々しい描写はオブラートに包んでくれて、核の悲惨さを伝える内容ながらも子供から大人まで年齢を問わず観やすいっちゃ観やすい。

しかし救いはありません。特にこの老夫婦、原爆投下に際してやってはいけない事を次々にやって行く。
当時はまだ放射能に対する正確な知識が普及してない時代だからそれは仕方がないものの、過去の戦争(第一次世界大戦)を良い思い出と語ったり、被爆後も電気・ガス・水道に何の心配もしなかったり、さすがにここまで楽観的な人も珍しいよ。

第二次世界大戦を経験した作家ブリッグズ本人の危機感を踏まえて、一般の被害者を描き出す為におそらくわざと無邪気なキャラクターに設定してるのだと思うけど、放射能とは無関係な事まで無知に描かれた二人の存在には、どこか反面教師のような役割も持たせてるんでしょうか。
映像中に何度も出てくる「国の言う事に従っていれば大丈夫」というセリフも、自身の頭で考えない事を危険視するメッセージが伝わってくるね。

子供の頃に『火垂るの墓』を観て(見せられて)戦争について学ぶ事の多い日本ですが、きっと英国ではこのアニメもポピュラーな戦史作品のひとつなのでしょう。このアニメを見て今の子供たちはどう思うのだろう?
モカ

モカ