珍念

風が吹くときの珍念のレビュー・感想・評価

風が吹くとき(1986年製作の映画)
4.0
2度目が見れない映画四天王のひとつ。
広島出身の私は、子供の頃夏休みの登校日が来るたびに戦争の映画やアニメを見せられていて、骨の髄まで原爆と憲兵の恐ろしさが染み込んでいる。ちなみに、うちの子供達はそうでもないようで、いつからか平和教育の方針は変わってしまったらしい。

そんな広島人からすると、様々なハリウッド映画から垣間見える西洋人の原子爆弾に対する感覚は信じ難い。トゥルーライズでもインディジョーンズでも、ニュークニュークと喜んで原爆を炸裂させて平然としている。しかし、その一方でK-19など原子力潜水艦の被曝事故の映画では放射能の恐ろしさを十二分に描いているわけで、放射能自体についての認識はあるのかとも思う。

そしてこの映画である。
原作の漫画絵本も恐ろしいが、アニメ版はさらに輪をかけて生々しい。老夫婦が放射線障害で弱り、死んでいく様子が淡々と描かれているが、とても観ていられない。
善良な彼らを救う方法は無かったのかと思ってしまうが、平和教育によって放射能=悪魔と刷り込まれた脳では、原爆の前には全て無為だという意識が働いて正常に判断する事ができない。

そして、我々の祖父の時代、広島と長崎では現実に同じような事が起こり、多くの人々が見殺しにされたのだと改めて気づくのである。少し前に亡くなった私の祖父は被爆者であったが、他の多くの同世代の人々と同じように戦争についてあまり多くを語らなかった。それは何故なのだろうか、祖父も祖母も他界してしまった今となっては、聞くあてもない。
珍念

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