なお

パルプ・フィクションのなおのネタバレレビュー・内容・結末

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

"正しき者、悪しき者、導く者"

「一人で何が悪い!クリスマス名作映画祭」の1本目。
不朽の名作と名高い本作、自分が加入しているサブスクでの配信はなく、鑑賞まで行きつくのがなかなか高いハードルであったところに飛び込んできた朗報。

なんと、目黒シネマにてこちらも誰もが認める名作『ショーシャンクの空に』と同時上映を敢行するというではないか!

マークしている最新作が大手シネコンにて続々公開されている今冬だが、たまには趣向を変えてミニシアターで昔ながらの名作に舌鼓を打つのもまた一興。
ということで、久しぶりに目黒の地に降り立ち名作2本の鑑賞に臨んでまいりましたとさ。

✏️エゼキエル書25章17節
「パルプ・フィクション」と聞くと、やはりユマ・サーマンがベッドの上でタバコを吸いながら蠱惑的な眼差しでこちらを見てくる作品ポスターが印象的。

しかしながら本作の主人公は、とあるギャングに属する殺し屋・ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)とそのギャングと黒い交際があるプロボクサー・ブッチ(ブルース・ウィリス)。
ユマ・サーマンが演じるギャングのボスの妻・ミアの出番はそれほど多くなかったのが意外だった。

ヴィンセントとその相棒であるジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)がこなすギャングの”仕事”の話に、ブッチが持ちかけられるボクシングの八百長試合の話、ヴィンセントがミアに対して身分違いの淡い恋心を抱いてしまう話…

それぞれは一見独立した物語であるが、最後まで本作を鑑賞した後の「点と線が繋がる感覚」は何とも快感。
時系列を前後させるストーリー進行の手法は今でこそ決して珍しくはないが、当時としてはかなり目新しい見せ方に映ったであろう。

個人的なハイライトは、なんといってもクライマックスシーン。
映画冒頭、パンプキンとハニー・バニーという二人の若い男女がレストランにて強盗に手を染める。
その顛末はしばらく描かれることはないが、この投げっぱなしになっていた伏線がここで回収される。

「あのシーン結局なんだったんだ?」
というか、ほぼ忘れてさえいた冒頭のシーンがヴィンセントとジュールス二人の登場によって俄然色が変わってくる。

ここでジュールスが披露する、自分が殺しの際に相手に向かって吐いていた聖書の一節。
「誰が悪で、誰が正義で、誰が導く者なのか---」
この日は朝からトラブル続きだったジュールスが、単なる”殺し文句”としてしゃべっていた言葉を自分なりに咀嚼して考えを改めている…ようにも見えたこのシーン。

あの数分間には、一度鑑賞しただけでは味わいきれない教訓やメッセージが見え隠れするようで、本作をサブスクで何度も何度も繰り返し見ることができないことを悔やむばかり。

余談だが、ジュールスが語る例の一節。
厳密には聖書に全く同じ節があるワケではなく、そのほとんどのセリフは千葉真一主演の映画『ボディガード牙』の冒頭に流れるナレーションが元になっているという。

☑️まとめ
2時間半と映画としては少し長めの尺ではあるが、軽妙な会話劇とクライム作品らしいほどよいエロティックさとほどよいグロテスクさのバランスが心地よい。

「時系列が前後する」という、あくまで現代においてはさほど珍しくないストーリー進行の技法を早くも取り入れていたタランティーノ監督の先見性も光る。

もし自分が’94年当時に本作を見ていたならば、それは相当な衝撃だっただろうし、さらに点数は上がったかも。

願わくば自分が今まで見てきた過去の名作や最新作の記憶をいったん消し去ったゼロの状態で見てみたくなる作品。

🎬2022年鑑賞数:114(51)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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