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パルプ・フィクションのEyesworthのレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
5.0
【映像で見るドラッグ】

クエンティン・タランティーノ監督の代表作。時系列がバラバラの取るに足らない陳腐な出来事がパズルのように巧妙に組み合い、ラストのあの名場面に繋がっていく。(そういえばチェンソーマンのオープニングのシーンだ)
タイトルの『パルプ・フィクション』は安っぽい(低俗)小説という意味なので、これ以上にない最高のタイトルだと感じた。

ジョン・トラボルタ(ヴィンセント)とサミュエル・L・ジャクソン(ジュールス)2人の名優が下っ端ギャングを演じた。下劣な掛け合いで、くだらないやり取りが多いにもかかわらず、この2人だからか何故か説得力があり面白い。『キル・ビル』のユマ・サーマンが前半にミア役で登場。表紙でベッドに寝そべってタバコをふかしてる女性だが、こっちのサーマンはネジが外れていてまた違う良さがある。タランティーノと相性が良いのだろう。また、タランティーノ監督自身もジミー役として出演しており、妙に味のある演技をしているのも見どころ。

前提がギャングの話なので、ブラックジョークや銃での脅しなど過激なストーリーだが、そこにジュールスの神の奇跡の話など宗教的な側面が加わる。彼自身が言っていたように、大事なのは神が実在するかよりも自分が神を感じられたかどうかである。実際にジュールスはそれを契機に強盗から店と人々を守り、ギャングの世界から足を洗うことにした。
我々視聴者から見ればくだらないことの連続でも、本人たちにしてみれば真剣な一瞬一瞬の連続なので、その緊迫感とくだらなさの緩急がこの作品の大きな魅力となっている。序中盤は緩慢な印象だったが、ラストですべてを持ってかれて思わず目が釘付けにされる。この作品でしか味わえない非常にチープで同時に高雅な映像体験であった。
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