シートン

パルプ・フィクションのシートンのレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
4.5
ストーリーが複雑なプロットに組み替えられる。時間的な方向性は一貫していないが、オープニングとラストが円をなすように閉じられており、完結性を持っている。この作品はいくつかの犯罪を描いている。そして三つの大きなまとまりのなかに、それぞれ秘密が生成され、それぞれの2人組はその秘密を保持することで、強固な関係を結ぶ。

ジュールとヴィンセント以外は、それぞれにカップルとなっており、恋人や妻がいる。2人にだけ、恐らく恋人がいない。

奇跡を信じたジュールは生き残り、信じなかったヴィンセントは彼のいうニヒリスティックな、「偶然性」によって落命する。信じる者は救われる。
ジュールには、ユーモアやアイロニーだけでない真摯さがある。ヴィンセントは優しいが、自分自身に対しては、投げやりである。

そして映画が締めくくられ、彼が新しい旅に出て行ったことが作品を振り返ることで確かめられる。その点に、この作品の単なるブラックコメディに終始しない祈りと希望を感じる。破壊的で卑俗でグロテスクでスカトロジックな内容のなかに、少しくらいささやかな望みが託されていたって罰はあたらない。その快さと温かみ。
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