垂直落下式サミング

パルプ・フィクションの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
5.0
盗まれたスーツケースを取り返したギャングの二人組が、レストランで強盗を企てるカップルに出くわす。一方、八百長試合の報酬を受け取って逃げるボクサーが、銃器店の地下室に監禁されたギャングのボスと遭遇。そして、それぞれの逃避行が血みどろに展開する。
私事ですが、大学生のとき、超嫌われてる先輩の家に呼ばれたことがあって、案の定クソもつまんない話ばっかで、帰りたいな、帰りたいなって、そう思いながら、部屋の壁に貼ってあったこのポスターをみてた。そんなことばっかり覚えてる。
壁のポスターは、グラドルやアニメとかのほうが信用できる。サブカル系に彩られた部屋をみると、自分事ではないのに、なんだか気恥ずかしくなってくる。ユマ・サーマンの流し目の視線の先に、アメリカインディアンのお守りみたいのが吊るされてて、本棚には大判コミックのAKIRAがインテリア化してて、お前はいったい何が好きなんだよって…。養殖サブカラーがよ。
みる前の印象が最悪だったのよね。アイツが好きなモノなんか面白いわけねえって、ひねくれた態度で観てしまったから、初見は素直に楽しめなかったんだよな。
やっぱ、タランティーノのバイオレンスは、ヤバいとかえげつないとか言われるけど、イーストウッドとかスコセッシみたいなガチの人と比べると、どこか遊戯的な感じ。
見世物としての暴力を再現してるのであって、本当の痛みや悲惨さを描こうとしているわけではないみたい。そう思ってみたら、けっこういけた。『キルビル』や『デスプルーフ』も、もう一回ちゃんと見返せば面白いのかもね。
『パルプ・フィクション』は、好き嫌いとかじゃなくて、観とかなきゃいけない映画のひとつ。この一本で映画の歴史を変えちゃってる級のタイトルは、古今東西探しても数えるほどしかないと思うのだけど、本作の大ブレイクが90年代以降の雰囲気を決定づけたのは間違いない。面白いことが起こっていれば、映画は成立するってことを、しっかりと証明してみせた。
素直な気持ちでみたら面白かったな。パルプフィクションは大好きになった。パルプフィクショングッズを持ってるような奴は、変わらず大嫌いなのは変わらないけど。一生ビレバンで買い物してろ。