三隅炎雄

夢は夜ひらくの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

夢は夜ひらく(1967年製作の映画)
4.2
野口晴康(博志)監督によるかなり個性的な歌謡映画。傑作と言っていい。
昼は図書館で働き、夜はクラブで歌う園まりのもとに、アウトローの高橋英樹が園の兄(小高雄二、写真のみ)が遺した金を届けに来る。恋人でカタギの渡哲也と高橋との間でゆらぎ始める園。これに高橋を追う珍妙なギャング二人組名古屋章・平田大三郎が加わって疑似ムードアクション的世界が展開されていく。
園まりの歌声と端正極まる野口演出がからみあう映画の官能的な美しさにまず心を奪われる。がこの美しさは単純なジャンル映画のそれではなく、元々人工的な日活アクション世界の、その模造品紛い物という二重の人工の批評的面白さがあって、夜の遊園地ドリームランドでのまさに「夢の中のような」対決がそのことを駄目押し的に証明する。
名古屋と平田の二人は、野口の助監督だった鈴木清順の映画からふらり遊びにやって来た道化のように見える。その二人に雇われてドタバタするのがザ・ドリフターズ。道化に雇われた道化という役割。野口が撮るとドリフもきれいにフレームに収まって随分都会的に洗練されて見える。
同じ監督の『拳銃無頼帖 明日なき男』の批評性を面白いと思った人は、多分この映画も気にいるだろう。見かけよりも知的な映画ではないか。
三隅炎雄

三隅炎雄