無意味な無軌道、地上の痴情、地下の退廃。紀伊國屋を起点とする面と裏の顔、ジュクと呼ばれた街の朝方の残滓。やっと観られたの想いが強くて不必要に感動してしまった気がするが、どう考えても今じゃ撮れない時代の画と言うのが映っている。少なくともブリジット・フォンテーヌ「ラジオのように」の用い方としてこれ以上はないと思うし、観たことないけどゲンズブールとかもあんな感じなのでは、知らんけど。パッキパキにキマッた江戸アケミ、AUTO-MODには布袋もいたんだっけ、一番カッコよかった頃のミチロウ。牛乳配達襲撃の衝撃、火炙り幼虫、バルサン供養、カラスの飼育、よく育つ肥料。見てくれだけは綺麗になったTOKYOも、蓋を開ければ変わらない、相変わらずのゴミ溜め。

♪　電動コケシが食べたのは
　　からっぽになったビルの空

今から40年前の青春。
…と書くと格好良く聴こえますけどね。
青臭くて尖がった“意識の高さ”と定義すると痛々しいだけ。鑑賞するのがとてもツラい作品でした。

特に物語のつなぎ方が雑なんですよね。
これは“わざとそうしている”のだと思いますが、正直なところ、ただ不親切なだけ。稚拙さを誤魔化しているだけにしか見えません。

画面がモノクロであるのも同様。
後半に刺激的な場面（無修正！）があるので、それを陳腐にしないためかな、なんて邪推しちゃうのです。それって本作の方向性からすると逆効果。日和ったアナーキズムみたいに思えました。

でも、当時はこれが最先端だったのでしょう。
新しいものを求めるのは若さゆえの特権ですが、振り返ると恥ずかしくなる…というのは今も昔も変わらない話。寧ろ、恥ずかしくない、ということは成長していない…と同義かもしれません。

それに歴史的な価値があるのは確実。
新宿の街並みをベロリと映した場面は、当時の風俗を飾らずに捉えることが出来ますし、街中で聴こえるアナウンスやコマーシャルを形にしたのは意義がある話。好事家ならば尻尾を振るレベルです。

ズラリと並んだ公衆電話も圧巻でしたね。
劇中では深夜だったので人が少なかったですけど、昼間ならば多くの人が電話していたのかな…なんて思うと、色々と複雑な気分になりました。

あと、不思議だったのが電話ボックスのガラスを割る場面。あれはどうやって割ったのか。また、キチンと弁償したのか（本作の方向性からするとゲリラ撮影っぽいので）、とても気になりました。

まあ、そんなわけで。
新宿界隈に迸った熱量の残滓。
当時若者だった人（60代以上かな？）ならば「懐かしいな」と鑑賞できると思いますが、それより下の世代からすると歴史的価値を見出さないとツラい作品。反面教師にするなら申し分ないと思いますが。

• #爆裂！アナーキー日本映画史

80年代初頭の新宿。
今と比べてガラリとは変わってないけど、丸井のアナウンスとか公衆電話がズラーッと並んでたり（西口の地下かな？）、ちょいちょい今だったらビックリ！みたいな場面が。

夜に行動的になる色んなタイプの人達でまさにカーニバル。
ずっーとダークな感じが続くけど、ラストは何かホッとする映画。
昼と夜の世界の違いがハッキリ出てる。