ボブおじさん

ピンポンのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ピンポン(2002年製作の映画)
4.1
スポーツを題材にした名画は数多くある。
野球・サッカー・ボクシング・陸上競技・ラグビー・アメフト・テニス・バスケ等々。だが思い起こされるスポーツ映画の中に日本の映画はどれくらいあっただろうか?
日本にはスポーツ映画の名作は少ない。そう断言すると反論も出そうだが、私はそう思う。

だが中には例外もある。「ピンポン」はスポーツを題材にした日本の映画としては、数少ない名作だ。

原作・脚本・キャストが見事にハマり、監督の曽利文彦がスローモーションと極端な寄りの映像そして得意のCG技術を駆使して卓球の持つスピード感と躍動感を再現している。また地味な仕事だが球を打つ音や床をキュッキュッと踏むステップの効果音が臨場感を高めていた。

もともと原作を読んでいたので、松本大洋の独特の世界観をどのように映画化するのか不安があったが、30歳を少し過ぎた売り出し中の脚本家宮藤官九郎が1時間54分の台本に見事にまとめた。

ペコとスマイルという2人のキャスティングは、当時売れっ子の窪塚洋介と全く無名だったARATA(井浦新)。撮影時23歳と28歳の2人が完全に高校生になりきり奇跡的な演技を見せる。

脇を固める役者も今見れば実力者が揃っていた。夏木マリや竹中直人など実績あるベテランはもちろん、2人のライバルとなる中村獅童や大倉孝二、先輩役の荒川良々などは、まだ駆け出しだったがその後の活躍を予感させる演技を見せていた。

天才型のペコと努力型のスマイルの立ち位置がいつしか逆転してという展開は、王道のスポ根の流れだが、その根底にあるのは2人の友情を超えた愛にも似た絆だ。

一打一打にあり得ないほどの時間をかけるのは〝巨人の星〟以来の日本スポーツエンタメの伝統芸。ゲームの流れとプレイヤーの心理を表現し、観客に読み取らせる為の必要悪だ。

スマイルにとってペコは昔からヒーローだった。それは今でも変わらない。ピンチの時には必ずヒーローが現れる。〝お帰りヒーロー〟

何度も繰り返し見返したくなる日本の青春スポーツ映画を代表する傑作。


2002年劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。