半兵衛

女真珠王の復讐の半兵衛のレビュー・感想・評価

女真珠王の復讐(1956年製作の映画)
3.0
「日本初のヌード映画」という煽り文句に期待して鑑賞すると肝心のその場面はロングで、しかも重要な場所は映らないように誤魔化しているので損した気分になるので注意。ただ主役をはる前田通子の豊かなバストは現在でも男性の目を引くほど魅力的で当時の観客同様そこを嗜むだけでもそれなりに楽しい、1950年代でここまで扇情的なシーンを撮ることが出来たのはやはり担当した志村敏夫監督と主演女優が当時付き合っていたからだろうなと邪推する(ちなみに当時新東宝のスター女優だった前田はその直後他の監督の作品で肌をさらすことを拒否して会社の怒りを買い、志村監督とともに新東宝を追い出されることになる。そして同じくグラマラスな容姿を持っていた三原葉子がその後釜を継ぐことに)。

序盤婚約者もいる幸せな生活を送っていた女性がある人物の罠により転落の人生を過ごす羽目になり、やがてある事故から海へ流されて漂着した島でアナタハン島事件みたいなことをしているうちに島の周りにある大量の真珠を回収して財産をなして自分を追い詰めた人間たちへの復讐を開始するという「岩窟王」みたいな展開へとバタバタと変化する濃すぎる内容を一時間半でテンポよくさばく演出も見事で、当時売れっ子監督だったという志村氏の手腕が確認できる。ただ特に工夫のある演出もせずオーソドックスに娯楽作品を撮っているだけなので見終わったあとは何も残らない。

まだブレイク前の悪人丹波哲郎や、女性を襲う藤田進など豪華なキャスティングの意外な役どころも面白く、なかでも主人公が漂流した島ですでに暮らしていた良識ある青年で復讐鬼前田をサポートする天知茂のイイ人演技が見所。朴訥で純情そうな振る舞いをする好青年ぶりはとても数年後に色悪でブレイクする人間とは思えず、役者ってこれほど変化できるのかと感嘆する(関係者いわく、イイ人演技のほうが地とのこと)。

ちなみに前田通子はその後映画での復帰がかなわず、テレビドラマの世界で細々と活動することになる。『仮面ライダーV3』でのゲスト出演もそうで、子供の頃はまったく印象に残らなかったが大人になりその事情を踏まえて見返すとその翳りのある風貌も相まって「苦労したんだな…」としみじみしてしまうはず。
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