みてべいびー

柔らかい殻のみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

柔らかい殻(1990年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

なんかどこから始めたらいいのかわからない。2、3年前に両親から絶対好きだよ!っておすすめされてからずっと観たくて、やっと観れたのがとりあえず嬉しい。最初から最後まで景色が本当に美しかった。麦畑も炎も夕焼けも、印象に残らない構図が一つもないくらい、全部脳裏に焼きついてる。監督が元画家だったのもあって、絵の中に入り込んだみたいに幻想的。カット割も好きだったなぁ、ラストのブチ切り方まで非常にツボだった。中盤机の上の写真が風で飛んでいったあと、風に揺れる麦畑の景色に切り替わるところがめちゃめちゃ洒落てて痺れた、何度でも観れる美しさ。
いやまず序盤からぶちかましてくる笑。衝撃の一言。都会で育った身としては全く想像もつかない遊び方。子供って残酷だよなぁって思う反面、大人になっても人間誰しもその要素は持ち合わせてると思うんだよね。
にしてもこの村落?区域?の人たち変わった人多すぎん笑?鳥の鳴き声真似しながら歩いてくる双子といいクセ強い保安官といい、David Lynch味あると思って観てたんだよね。そしたらポストLynchって言われてたらしくて、あながち自分の直感も間違っちゃいないなと思ったり。ちょっとDiane Arbusの写真見てる時の気持ちに似てる。
でも主要な役の人々(Dove一家とかDolphin)は結構普通に受け入れられた。確かにみんな問題ありすぎて崩壊してるけど、悩み抱えながらあんな何もないところで生活してたらそりゃ精神病んだり妄想に取り憑かれたりするよね。何ならそれが自然な気さえする。母は破綻した家庭の唯一の希望を長男に託し、父は自分の性的指向に罪悪感を持ち、Cameronは戦争のトラウマと長男としての責任から逃げるようにDolphinとの逢瀬を重ね、弟のSethは同じ悪戯を繰り返す凡庸な日々に飽きて自分の想像の世界に閉じこもる。みんなたがが外れちゃってるけど、何ならすごく人間らしい。
Sethをクソガキって書いてる人多いし、Dolphinの部屋のものぶっ壊す場面とかはさすがに9歳にもなればもう少し善悪の区別ついてていいだろって思ったりもしたけど、個人的には彼と小さい頃の自分がすごく重なった。もちろんあんな大胆なことをやらかしたりはしなかったけど、一人っ子だったこともあって常に自分の頭の中に住んでたし、思い込みも激しかった。子供って退屈の度が過ぎると自分で何かしでかそうっていう方向性に引き寄せられるものだし、彼の場合は周りの環境も劣悪すぎる。かと言って誰のせいでもないのが悲しいところだけど。今思えば色々と異様だったなぁ笑。CameronとDolphinがお母さんの目の前で熱烈なキスし始める場面が一番ぞわぞわした。もっといくらでもありそうなもんなのにな、、、なんでだろ。
でもすごくモヤモヤが残ってるのは、ラストのSethの叫び。彼が何を思っていたのか、私にはいまだにわからない。父や友達が死んでも悲しんでる様子はなく、むしろ炎に魅了され、友達を死に追いやった犯人を告発することよりも、事実を捻じ曲げてまで自分の想像を正当化することを選んだわけだよ彼は。明らかにわざとDolphinを陥れ、彼女の死を予見しているからこそ最後Cameronを止めようとすがりつく。彼がサイコパスぽいとかってことでは全くなく、単に本当に幼く純粋。だとしたらSethは最後何で叫んでいたんだろう。自分の過度な思い込みの代償が大きすぎたから?Cameronの悲しむ様子を見て初めて死の重さに気付いたから?でも彼が悲しむことはわかっていたはずだし、それまで罪悪感のかけらも見せなかったよなぁ。とか色々考えた結果、少しでも憧れのCameronの気持ちを理解しようと彼の悲しむ姿を真似しようとしてたから、かなぁと言う捻くれた結論に漠然と辿り着いた。彼に感情移入した結果むしろそれしか思いつかない。お父さんのお墓でもCameronがポケットに手つっこむ仕草を真似してたし、、、にしても短絡的過ぎるか。でも彼はあくまで自分が正しいと思ってやってきたわけで、何なら自分が悪いとはこれっぽっちも思ってないんじゃないかなってくらい、彼に善悪の区別、ましてや死の重みが理解できてるとは到底思えないんだよね。という初見の感想。またこれから何度も観て考察を深めたい。あと間違いなく若かりしViggo Mortensenがプレシャス。
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