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チェイサーのpepeのレビュー・感想・評価

チェイサー(2008年製作の映画)
4.1
実在の事件をモチーフにフィクションとして仕上げた、えぐみの際立つ韓国ノワール。その後「哭声」を生み出すナ・ホンジン監督らしいおぞましさが際立った作品でした。

勘は働くがその前に手が出がちな元刑事現風俗斡旋業者の男と、一見朴訥とした印象をもたらすシリアルキラーの青年。序盤から彼らは顔合わせし、青年の正体を悟ったうえでの追いつ追われつの心理戦・度々のアクションが、被害女性の子どもと元刑事のぎこちないやり取りや頼りない警察のあたふた模様と共に、緊迫感を保ったまま描かれます。

冒頭からきつい暴力的な画面があり、犯人が堂々とわかっているのにそれで終わりとならない歯がゆさは、終盤「まさか」と言いたくなるような展開で、思い切り奈落に落とされます。韓国ノワール物でもなかなかの地獄、酷さに心底怖ろしくなりました。

このシリアルキラーを演じるのがハ・ジョンウで……この方の作品ならば「神と共に」をまず思い出す自分としては、かなり衝撃的でした。この役をきっかけにブレイクしたという話も納得。淡々とした不気味さを、素晴らしく怖気立つキャラクタとして演じていました。

彼がおぞましく演じきったからこそ、作品に説得力が生まれるともいえます。被害者が実在する現実の事件を借りるという覚悟が、演者と監督とスタッフに感じ取れた作品でした。
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