【心の故郷(ふるさと)】
いや〜、この頃のATG映画は本当に良質なモノが多いと実感させられる。和製クロード・ルルーシュと謳われた斎藤耕一監督作品。
青森県津軽市を舞台にしたヤクザと情婦の逃避行と、二人の男女の新しい生き方を模索していくプロセスを丹念かつ叙情的に描いた名品。津軽のロケーションが素晴らしく時折挿入される映像がいちいち美しい。
主演江波杏子のどこかやさぐれたニヒリスティックな佇まいも70年代らしい味わいがある。三味線で弾く津軽じょんがら節に併せて若者の生き死にが語られるこの世の諸行無常観が良く滲み出ており、さすがはATGだなぁとしみじみ思う。
日本映画って今村昌平や神代辰巳辺りから一種の土着的リアリズムに嵌っていくんだけど、本作もそんな「土着的な邦画」の典型例みたいな作品である。ナチュラルでダウン・トゥ・アースな魅力に満ちた傑作。