イホウジン

ターミナルのイホウジンのレビュー・感想・評価

ターミナル(2004年製作の映画)
3.7
国家や個人のしがらみを越えた“超空間”としての国際空港。

一個人としての人間の尊重の場の象徴として国際空港を扱った点はとても良い。舞台こそ縛られるが、その分狭く深く世界観に浸ることができる。本来なら短時間しか留まらない“交差点”としての空港に長期間滞在する主人公という特殊な視点から、観客に向けて「世界の“境”とは一体なんなのか」という問いを常に考えさせる。
故に今作の肝である「空港から出られるか出られないか」を巡るイザコザは実に妨害側が滑稽だ。主人公の旅行の目的は些細なものだし、その事実が分かる前からでも妨害側が守ろうとしていた“なにか”が空転しまくっているのがよく分かる。牧歌的ではあるが、グローバリズムの目指す先の一つの姿であろう。

ただ、全体の展開はどうも拙い。そこそこ感動を誘う場面はあるが、それらがいかにして起こったのかについての言及が不十分である。また、出来事一つ一つも突拍子のないものばかりでストーリーに一貫性を感じられなかった。清掃員の行動も一体なぜそうなった?
そもそも主人公の初期設定が果たして意味を持っていたであろうか?序盤こそ主人公が祖国を心配する場面があるが、途中からはただの空港滞在コメディになっていたのが残念である。政治スリラーにも出来るようなテーマだったが、観やすさと引き換えに重さを失ってしまったように思える。
イホウジン

イホウジン