垂直落下式サミング

ドラえもん 2112年ドラえもん誕生の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.7
ドラえもんオリジンストーリー。
原作者の藤子・F・不二雄が次の連載のネタがなくて悩むシーンからはじまって、ドラえもんのアイデアを思いつくところで終わるオシャレコンピレーション。ドラえもん誕生と連載開始までのエピソードが入れ子構造になっている。
ドラえもんのキャラクターができる前、連載前の予告に「机の引き出しの中から謎のキャラクターが現れる」ってして引きだけ書いて、明日には原稿仕上げなきゃいけないって状況で出来たのがドラえもん。
幼い子供もいるのに酒飲んで帰って寝ちゃった俺は何てダメな人間なんだって自己嫌悪に苛まれていたところ、猫がいて起き上がりこぼしを蹴っ飛ばしたらアイデアが降りてきたってのは有名。設定もデザインも、土壇場であとから出てきたってのが驚き桃の木。アーティストの産みの苦しみと、何がブレイクするかわからない商売としての漫画家業に想いを馳せることができる好きなエピソード。
描かれるのは、頭のネジが(物理的に)外れた落ちこぼれダメロボットとしてのドラえもん。ロボット養成学校の成績はめっちゃ悪い。これをドロップアウトだとか落第だとか言わずに、オヌシは個性をいかせるクラスに転入だー!と言ってくれる校長先生の優しさに未来世界のゆとり教育を感じる。
後に親友になるドラえもんズたちとも出会うし、ノラミャー子もエッチくて好き。ファーリーフェチだから、ノラミャー子ほんとにだいすき。僕の年上好きはここからかも。「チューしてもいいわよ」「声がセクシーね」とか、キレイなお姉さんに惑わされたい。この女のポケットの中のどら焼きをむさぼり食うドラえもん。ほんと快楽主義者だよなコイツ。
なんで丸くて青い見た目になったのかは、原作とは違う理由で、映画オリジナルストーリーらしい。不慮の事故で耳を欠損するとか、女に見てくれを笑われるとか、よりによってメンタルが弱ってるときにひみつ道具に頼ってよりヒドイことになるのとかも、いい具合にブルージー。
ロボットオーディションのところも大好き。どんなやつにも使い道があるんだって気持ちにさせてくれるし、使い道なんかなくたって存在してるだけで世界に肯定されてるんだって、最上の人間賛歌にも思える。
ドラえもんには、のび太の前にセワシとの物語があったわけだから、いつもの人生二周目な落ち着きに納得がいった。
お気に入りは、ネコ型ロボットの製造工程がわかる冒頭のところ。子供のころ印象的だったのは、ここで赤い鼻がとりつけられると、ドラえもんの白目のなかがスロットのように回って、最後にカチーンと黒目が点るシーン。横でみてた親父が「イーマンか…」と小声で言った記憶が、よみがえってきた。
子供のころは「イーマン」の意味わかんなかったけど、スロットの絵柄のなかに雀牌の一萬があったのか。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。大人になってわかる人生の伏線回収。目押しはスロカスの血ですわ。ヤダヤダ…。