伊達巻

ラ・ピラートの伊達巻のレビュー・感想・評価

ラ・ピラート(1984年製作の映画)
4.6
凄すぎて変な笑いが漏れ出る。始めは何となく『ビフォア・サンセット』を死ぬほどややこしくした感じの映画みたいだななんてぼけっと肩肘ついて観ていたが、やや過剰に思えるほどのジェーン・バーキンの台風のように激しい情のざわめきを観察するうちに少しずつのめり込んでしまい、大袈裟なものを大袈裟として捉えられなくなっている。そしてこれはそもそも「ややこしさ」を描いている作品なのだと分かる。そしてその「ややこしさ」というのは、正に最低の出し物としてしか機能し得ない。後にも先にも行く道がない。全てを失うと同時に失いきれなかった断崖絶壁の孤島の上では互いに愛し合い傷つけ合い踊り狂うほかにないのだ。全く手のつけようがない。終わらせるにも、終わらせられない。一度拒んだもののふと手にしてしまった凶器で己の魂と身体に深い傷をつけようとも、まるで気紛れの意志などはじめから嘲笑の対象でしかなかったかのように、空を舞い壁を刺し股の間に着陸するナイフ。どうしようもない。船上からクライマックスにかけてのシークエンスの静けさ(それはとてもうるさい)が物凄い。小さなズボンには大きすぎる銃をしのばせて。
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