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女は男の未来だのnetfilmsのレビュー・感想・評価

女は男の未来だ(2004年製作の映画)
3.7
 ソウルに今年初めて訪れた初雪の日、目的地に向かう緩やかな坂を、ホンジュン(キム・テウ)はゆっくりと歩いて来る。家の前で待ち構えるのは大学で美術講師をしているムノ(ユ・ジテ)。映画監督のホンジュンは7年間のアメリカ留学を終え、韓国へ帰って来た。ソウル市内の一戸建てに妻と子供と暮らすムノの家を見たいと先輩は言うが、部屋が汚いからと言う嫁の言葉により、近くの呑み屋で酒を酌み交わす。全面ガラス張りの眺めの良いテーブル席に座り、すっかり酩酊したホンジュンとムノは、店のアルバイトの女の子にそれぞれ、ドキュメンタリー映画に俳優として出ないか?油絵のモデルをやらないか?と話しかけるが、警戒する女にはっきりと断られる。現像した写真を撮りに行くと後輩に伝え、気まずい空気のホンジュンは呑み屋から外に出ると、時制は突如、過去に変わる。夏の昼下がり。ソナ(ソン・ヒョナ)は高校時代の先輩に待ち伏せされている。先輩の誘いを断り、徒歩で帰ろうとするソナに対し、先輩は無理やりタクシーに押し込み、プチョンへ連れて行かれ、レイプされる。翌日、好きだったホンジュンにことの次第を話したソナの態度に男はショックを受けるが、ソナをホテルに連れて行き、汚された体を洗い、汚れを落とすために成り行きでセックスをする。

 酒を酌み交わすほどの深い仲に見えたホンジュンとムノの関係は、実はあまり親しくない。先輩のために初雪に足跡をつけなかったというムノの白々しさは、ソナと付き合う先輩に嫉妬し、アメリカに出国した先輩を出し抜き、ソナを口説く。新郎の結婚式にかこつけ、花束を手にやって来た敬語を使うムノの態度に、女は満更でもない表情を浮かべるが、翌日、待ち合わせ場所に現れたソナは、まるで別人のようなパーマをかけている。その姿に内心は意気消沈しているムノだが、連れ込んだ部屋でホンジュンに無断でソナとSEXする。穴兄弟の微妙な再会、気まずい空気、紫のマフラーを付けた女の待ち合わせと春雨の炒め物、カフェ・シャンテの写真。糟糠の妻を捨てたと揶揄された男は責任を感じながらも、チキン臭いと断罪された飲み屋を出て、自宅へと戻る。隣人と彼女の愛犬の黒い犬、泥酔し、左手の手のひらに烙印を押せと何度も乞うホンジュンの姿、ソナの幼い頃のポートレイト。クライマックス、湧き水を汲みに行ったホンジュンとソナにはカメラは向かわず、ただひたすらにムノだけを追う。サッカー・グラウンドで待ち草臥れて、学生たちと呑みに行くムノの未来は、ソナとの過去にひたすら囚われる姿とは対照的に、前だけを見つめている。彼を糾弾したミンスの姿は、空港でホンジュンとソナの間柄を見つめた自身の姿にダブる。 前作『気まぐれな唇』で味をしめた90°パンの悪意ある動き、うだつの上がらない男たちは互いに言いたいことを言い切れないまま、女に慰められる。
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