Dio

イントゥ・ザ・ワイルドのDioのレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
5.0
今回は完全に私事の感想になってしまうことを容赦して貰いたい。
この映画は僕がこの世で一番好きな映画、主観なくては語れないほどに尊敬する映画であるため、どーしても思い入れが強くなってしまう。

何がここまで僕を魅了するのかわからない。見るたびに感じ方も感想も違うからこそはっきりとわからない。近すぎる絵画の魅力がわからないように、僕はまだこの映画を俯瞰して見ることが出来ない。それほどまでに自分の人生と密接しているから。

最初この映画を見たときは物質社会へのアンチテーゼ的な映画かと思った。今はその感想は間違えてはいないけど完全には正しくないと思っている。 今、言うならば回帰と再生。しかし何処までが回帰で何処からが再起なのか、それすらも明示できない。
回帰と再生、それ自身を確かめたかった、自分自身の経験に基づいて。

19歳の春、僕は旅に出た。
一年毎に数ヶ月ずつインド、ニュージーランド、アメリカ、イタリア。バックパックひとつでぶらぶらとした、時にはヒッチハイク、ファームステイ、野宿したりもした。特になにも目的もなしに色々な所を歩いた、こっ恥ずかしく言えば「自分探し」以外なにものでもなかった。

当時のエネルギーはどこから来たのかと言えば、1つはこの映画の影響が大きかったことは間違いない。
僕はこの映画によって疑問を提示され、旅に興味を持ち、世界を知りたいと望み、旅し、世界中との商売により生きたいと渇望し、縁から商社に入り、インドに駐在し今に至る。
全ては繋がっていて、つまるところ起源は些細な映画鑑賞でしかない。

それなのに人生にここまで影響を与えられる、それほどまでに、そしてここまで偉大な映画はあっただろうか、少なくとも僕にとっては多感な時期に人生のきっかけとなる映画を見ることが出来たのはこれが最初であり、そしてこれが最後になるだろう。

始めにも言ったが、僕はまだこの映画を咀嚼出来ていない、それは僕にとっては主観的な映画であり、客観的にまだ見ることが出来ないから。
ただ1つ、絶対的に言えるのは僕の人生はこの映画によって方向付けられたといっても過言じゃない。

正直、この映画より面白い映画はいくらでもある。
でもこの映画を越える映画は生涯現れない確信がある。
それは見ようによってはとても悲しいことだけども、見ようによっては早くして出会えた幸せなことでもある。

願わくば、全ての人に人生の1本足る映画を。
そう思わずにはいられない、根元足る価値観の創出を与えてくれた映画を。
Dio

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