テテレスタイ

東のエデン 劇場版 II Paradise Lostのテテレスタイのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

このアニメが暗に言っていることは「若い人はコミュニケーションスキルを磨け」ってことだと思う。前作のニューヨークでも主人公はほぼ日本語だけで現地のタクシー運転手と堂々と話していたし、今作でも全日本国民相手に自分はテロリスト(嘘)だと宣言して日本のおっさんたちに交渉を仕掛けした。

主人公のライバルたちはみんな陰で暗躍して表に出てこない奴らで、主人公と比べて信用できない人ばかりだった。主人公は何か特別な知識があったり得意な技能を持っている人物ではなく、主人公自身が何か立派なことができるわけではないが、しかし、主人公は話している相手をよく観察して、その人が言って欲しいだろう事を口に出して語り掛けるコミュニケーションスキルを有していたように思う。

ところで、今作の焦点となったのは主人公が総理の息子かどうかということだが、総理の息子かどうかはストーリー上どうでもいい感じがした。それでもそれをストーリーの焦点にした理由は、若い人がいわゆる親ガチャに成功したら人生イージーモードだと思っていることに関係していると思う。

若い人は上司が自分の意見を聞いてくれないという不満を持っていて、でももしも親のコネがあれば社長だって自分に一目置いて、上司も話を聞いてくれるだろうという期待があって、自分の実力を試せる機会を欲しているわけだ。

でも、主人公はきっぱりと自分は総理の息子じゃないと告白した。これはようするに親のコネなんてなくても自分の話を他人に伝えることができるという自信の表れだし、なんなら親のコネは逆に邪魔だという態度だった。

ニートが家にこもるのも人間関係に疲れて対人コミュニケーションを嫌っているからだろうし、若い社員が上司に意見を聞いてもらえないのも、コミュニケーションスキル不足の面が高いのではないかという話がこのアニメの副旋律だと僕は思う。

日本を救うために100億円を使うという話は、結局のところ、お金を持っているおっさん達と、お金を持っていない若い人たちが対等の交渉テーブルに着いたところで終幕を迎えた。日本を覆っている閉塞感の正体は、世代間のコミュニケーション不足によってもたらされているというのがこのアニメの主張で、若い人たちはたまにはおっさんと飲みに行って苦労話でも聞いてやれよという結論になると思う。そのためにはまずは若い人同士で団結してコミュニケーションスキルを磨く必要がある。

でも、人と話すとしてもネットの方が気が楽だし、電車に乗ると乗客の8割くらいスマホをポチポチしている。コミュニケーションとは疎遠な社会が出来上がりつつある。しかし、テレワークの浸透で、逆に、たまには飲み行きたいなという需要が発生したら、揺り戻しがありそうな気もする。。。やっぱないかなw