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青春の夢いまいづこのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

青春の夢いまいづこ(1932年製作の映画)
3.3
サイレント時代に小津安二郎が監督した青春コメディ・ドラマ。
原作・脚色は野田高梧。
撮影・編集は茂原英朗。
撮影補助は、栗林実、厚田雄春、入江政夫。
今回の鑑賞は「新音声版」で、声の出演は佐野史郎と倍賞千恵子。
モノクロ、スタンダード
(1932、86分)

堀野商事の社長(武田春郎)の息子・堀野哲夫 (江川宇礼雄)は、同じく応援団に所属する熊田順助(大山健二)と島崎省吾(笠智衆)、ガリ勉だが"頭が中学生"の斎木太一郎(斎藤達雄)と仲良し四人組。
行きつけのベイカリーの娘で朗らかな、お繁(田中絹代)は4人のマドンナで、中でも堀野と一番親しかった。
みんなで気ままな大学生活を謳歌していたが、堀野の父親が急に倒れ、彼は大学を中退して新社長の座に就任することに。
3年後、就職先がない島崎と斎木は、堀野を頼って彼の会社に入社する(学生時代同様カンニングして!)。
堀野は、不景気で叔父の店が閉店となったお繁も自分の会社で働かせる。
堀野は"共有財産"だったお繁と結婚しようと3人の許可を得るが、お繁が既に斎木と結婚の約束をしていたと知る…。

~その地の登場人物~
・大学の小使(坂本武)
・斎木の母(飯田蝶子):母一人子一人
・哲夫の叔父で、副社長(水島亮太郎):哲夫に縁談話を6回持ってくる。挨拶が長い。
・花嫁候補の令嬢ユリ子(伊達里子):モボ
・ユリコの母、山村男爵夫人(葛城文子)
・花嫁候補の令嬢(花岡菊子)

「あたしはあなたを待ってることが自分だけの夢だと思ってあきらめたんです」

「友情の鉄拳だ!
骨身にしみて覚えて置け」

不況下、社会に出て上司と部下の関係になると貧しい者は卑屈になって身を引こうとし、大学時代の友情に亀裂が生じる。
機会を逃すとIt's too lateになり諦めるしかない。
最後はハッピー・エンドでよろしい。
(男の友情を描い昔のフランス映画の香りがします)
社会に出ると変わるのは、何時の世も同じ。
敗戦後の日本人がすぐアメリカに懐いた(よく言えば民主化を取り入れた)ように、
また、学生運動をしていた学生たちが社会に出るとこぞって企業戦士になっていったように、
節操のない(よく言えば、生きていくため社会に適合した)、強い者に巻かれる変わり身の早さが日本人の特徴です。
"バンカラ"は時代遅れになりながら、旧制高校を母体とした現国立大の一部の尞(と主に寮生で構成されている応援団)で伝統的に残っている。

なお、試験問題が(時代を反映していて)面白い。時間に余裕がないひとは入社試験(日本史の勉強)だけでもチャレンジしてみよう。

~学期試験(大学:商科)~
「スミスとリカードの価値説に就いて述べよ
フィッシャーの所得理論の経理學的根拠に就いて記せ
マーカンティリズムに於ける貨幣觀念の發展を述べよ
max weberのIdeal Typus概念に就いて述べよ」

~入社試験~
「一、インフレーションとは何ぞや
    二、九月十八日事件とは何ぞや
    三、次の語句を簡単に説明せよ
       イ リットン報告書
       ロ  生命線
       ハ  ホラ信
       二  天國に結ぶ戀
       ホ  大塩平八郎
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