佐藤克巳

青春の夢いまいづこの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

青春の夢いまいづこ(1932年製作の映画)
4.0
学生ロマンスを描いた小津安二郎監督の一連の作品では、「若き日」が突き抜けている。しかし、急遽早撮りで製作されたにしては、我が母校早稲田大学前パン屋娘田中絹代と早大落第生斎藤達雄の「落第はしたけれど」を変形して、中退して社長を継いだ江川礼雄、卒業して江川の会社員斎藤達雄とし、「兎と亀」の田中を巡る結婚が題材となる戦後の小津作品に近似した青春映画の佳作だ。江川がチアガール紛いの応援団仲間の笠智衆、大山健二と田中の喫茶店にたむろする中、努力家斎藤ののろまでいじけた仕草に田中が母性愛を感じたとは、おそらく江川にとって青天の霹靂だったろう。田中と斎藤の新婚旅行列車を、3人がビルの屋上から見送るシーンは、確か「秋日和」?「秋刀魚の味」?「彼岸花」?
佐藤克巳

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