ベビーパウダー山崎

ぜったい多数のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ぜったい多数(1965年製作の映画)
3.0
青春群像劇というより挫折と敗北の話で、田村正和が癌で死ぬ前に送り込まれた修道院で語られる最期の手紙のくだりが、難病モノの死=哀しいという定番の展開ではなく、神のもと生と死を同等に説くスピリチュアルな領域まで映画を持ち上げていて、おそらくこれは曽野綾子の世界なんだろうけど、中村登は映画に物語を近づけるのではなく、物語に映画を懸命に擦り寄せている。60年代の歌って騒ぐ暑苦しい若者たちは表向きでしかなく、結局はみな日常に冷めていて身の丈にあった生き方しか出来ない、人生観が違うものは決して交わるべきではないという極端な思想含めて(おそらくこれも曽野綾子的な)異様な映画で興味深く見た。