クリーム

かぞくのくにのクリームのレビュー・感想・評価

かぞくのくに(2012年製作の映画)
4.0
ある意味鬱映画。そのくらい希望がなく絶望感を叩きつけられます。登場人物それぞれの気持ちが痛い程、伝わって来る。言葉少ない中に汲み取れるのは、素晴らしい作品だからと思います。皆、静かに耐える中、気持ちをストレートにぶつけるリエに思わず感情移入してしまう。在日コリアン2世である監督自身の経験を基に描くフィクション。

1959年~1984年まで実施された北朝鮮の帰国事業。多くの在日朝鮮人が北朝鮮へと帰国しました。当時16歳だったソンホもその1人で、現地で結婚し息子も出来ますが、41歳で脳腫瘍と診断された。 治療を理由に知人のコネで日本に一時帰国が許されたソンホは、日本で暮らす両親、妹リエとの25年ぶりの再会を果たします。しかし、喜びも束の間、彼らに待ち受けていたのは悲しい現実でした。



ネタバレ↓



ある夜、ソンホは上からの指示でリエを工作員に勧誘します。激高するリエに観ているこちらが辛くなった。兄妹間でこんな悲しい事をしなければならないなんて…。
腫瘍の治療は、3ヶ月という短い滞在期間では難しい事が判明します。何とか治療を受けさせる為に奔走する家族でしたが、突然、ソンホの帰国が決定します。
理不尽な決定を理解出来ない、リエにソンホは「あの国では考えずただ従うだけ。思考停止させているんだ」と言います。自分は、そうやって生きるしかないが、リエには納得しながら生きろとも言います。そして、家族の思いも虚しく、ソンホは北へ帰って行くのでした。

ソンホが北朝鮮へ渡った頃は、「地上の楽園」と言われ、在日の方達には憧れの地だった様です。父は、ソンホを送り出した事を一生後悔しながら、生きる。母も何もしてやれない事に胸を痛み続ける。リエもどうする事も出来ない現実に打ちのめされる。腫瘍があるのに何もせず帰国させる家族の心はズタズタです。
ソンホ自身も後悔しているだろう。だけど、祖国には大切な家族がいる。監視役の男ヤン同志がリエに「貴女が嫌いなあの国で貴女のお兄さんも私も生きているんです。死ぬまで生きるんです」という言葉が重かった。
拉致問題は、良くニュースで見ますが、帰国事業は、私はあまり知らなかったです。過酷な状況なのは想像しましたが、想像以上に辛い内容でした。知る事が出来たのは、良かったです。井浦新さんも安藤サクラさんも本当に素晴らしい演技でした。キツイけど良作でした。
クリーム

クリーム