Ham

IZO 以蔵のHamのネタバレレビュー・内容・結末

IZO 以蔵(2004年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

三池崇史監督の映画は個人的に蛇足と感じる部分が多くて白けてしまいがちなんですが、どうしても気になっていた本作をやっとこさ鑑賞。

とても概念的な映画だと思うので監督の意図とか本当の意味は自分には分かりません。なので個人的解釈を書きとめようと思います↓↓

戦争や死、人間の生の起源から誕生、出産など断片的なイメージから幕は開けます。そして場面変わりキリストのように磔にされ槍で処刑される岡田以蔵。
絶望と苦悶の中で息絶えますが、ふと気づくと現代のゴミ溜めの中にいます。
ウダウダと小難しい事を大仰な口調でたれる輩達が言っていることから、以藏は処刑され死んでしまったが怨みつらみなどから因果律?輪廻?をはみ出し彷徨ってしまったのだと思います。
因果律を侵す以藏の存在を良しとしない輩達が以藏に時代や時空を超えて様々な刺客を差し向けます。
多分流れはこれなんだと思うんですが、以藏が彷徨うのは恐らく自分自身の運命や因果に抗おうとする意思(怨念)からなのです。
現代や過去など時を超えて血みどろになりながら死屍累々の山を築いていく以藏はまさに宿命や運命という無間地獄で足掻いてるように感じます。結婚式、学校、家族などの場面は、いわゆる幸せや暖かさ、生前の以藏が手にできなかった事に対する執着や嫉妬を斬り捨てたのか…?そうやって刺客と戦いながらありとあらゆるものを斬り捨てていっているように思えます。まさに鬼に会えば鬼を斬り仏に会えば仏を斬りです。
そうした場面の中で、岡田以蔵を語るには欠かせない人物である武市半平太の場面があります。これは以蔵の出で立ちから生前の記憶なのかなと思いますが、武市に対して尊敬と畏怖の念を抱きながらも武市の言動に拳を握り締めています。
以藏にとってはどんな理不尽であっても決して逆らえない絶対服従の神のような存在として描かれているように映ります。
物語の後半、この武市半平太が以蔵の前に立ち塞がります。武市は以蔵に対して強い口調で攻めますが、様々なものを斬り捨て鬼のような形相になった以藏は「天誅」とだけ叫び武市を斬り捨てます。ここでメビウスの輪上を走りながら断ち切る描写があるので、以藏が自らにとって絶対の存在を斬る事で自らの魂の宿命、輪廻や因果を断ち切ったのだと考えられます。
その後何やかんやで以藏の魂の片割れであったサヤ(鞘?)から生まれ転生します。この以藏は恐らく因果や宿命を全部斬り捨てた以藏の魂が転生したもので神に近い完全な存在として転生したものなのではないかなぁと感じました。

他にも色々要素があったのですが、とりあえず大まかに自分の感じた内容はこんな感じです。
決して嫌いじゃないけど、ウダウダと小難しくて大仰な台詞や場面場面の描写が説明的すぎるのが個人的には非常に作品を退屈にしているんじゃないかと思いました。
抽象的に作ろうとしているかと思いきやメビウスの輪や台詞など異常に説明的な部分が凄くダサく見えてしまいました…
前衛的だったり実験的だったりするならもっと滅茶苦茶に糞を撒き散らして欲しかったなぁと思いました。
なんか、映画として考えてもアート作品として考えてもウダウダやり過ぎて中途半端になっちゃってる印象です…
要らなかったよ豪華俳優陣も台詞も…血飛沫とはらわたと絶叫の中で宿命に抗う魂の輪廻転生を90分以内で撮ってくれていたらスッゴい格好良い映画だったろうなぁと悔しい…

酷評してしまいましたが、決して嫌いじゃなくてどちらかと言うと好きな映画だっただけに、本当に説明的な要素が邪魔に感じました…

また機会があったら再度見直して、新しい気づきや感想を書きたいと思います。
Ham

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