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アイ・アム・レジェンドの海のレビュー・感想・評価

アイ・アム・レジェンド(2007年製作の映画)
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この一匹の犬と、その一人の飼い主が、居なくなったあとの世界に関心を持てず世界が救われたとか伝説になったとかどうだっていいよといつも思ってしまう自分が少し怖い。文明の末路を描いた、いわゆるポスト・アポカリプス物の物語において、生き残ったひとがどうやって生活をしそれを続け、精神的に何のために生き何に生かされているのかというのは、どんな形態、構造をした話であっても、わたしにとっては本当に重要なもので、他のどのフィクションよりも1番意味を持つものだった。わたしを映画やゲーム、小説の世界に引き摺り込んだのは、そういったジャンルだったし、数あるホラー映画のジャンルの中で群を抜いてゾンビ物が好きなのもその影響のうちだ。猫が、水を飲んだり眠ったりしている姿を見て、おぼえる感動は、猫と暮らし始めて6年か7年経とうとしている今でも少しも薄まることはなく、この命の活動をそばで見られることが、どんなに特別で価値のある、他では得難いものを連れているのかが、時間を重ねるにつれ、よりはっきりと分かるようになってくる。この映画で描かれる犬と人間の生活ほど理想の生活は自分には無いかもしれないと思う。人類に、滅びてくれと願っているわけではなく、ただ、こんなふうに無駄なもの全てから意味が引き払われたとき、彼らに残ったのが、ただひとつの、生きるということだけに向かっていくこと、生きるために食事をし運動をし風呂に入り睡眠をとり隣にいる生きものと話をすること、時計があって、規則正しい生活と互いへの労りがあること、それが残ったことが、本当にわたしにとって希望すぎて、人類がこれからどうやってその種を繋いでいくのかなんて心底どうでもいい。このままつづけてください、とけない緊張の中にすばらしい安心と安全があること、己の手で築いたものしかそこにはないこと、違ういきもの同士がこんなにも理解り合っていること、ひととひととじゃ決して出来ない関係がそこにあること。あの埠頭に、誰も現れないでください。そう祈った、はじめて観たとき。今も同じだった。
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