このレビューはネタバレを含みます
ヴァンパイア風ウイルスのパンデミック、終末論に根差した人類滅亡の危機、自己犠牲による救済、とありがちなテーマを描いた作品。
しかしながら前半の孤独な生活の表現はなかなか見事で、主人公のネビルが話しかける相手は飼い犬のサム、そして自ら店舗内に配置したマネキン達。
コミュニケーションが人間にとって重要であることが十分に伝わってくる。
サムを亡くし自暴自棄になったネビルを助けるアナとまだ幼いイーサンの2人連れはバーモントの生存者の村を目指している。
しかし皆死んだとその村の存在を認めないネビル。
ここでも、人とのコミュニケーションの有無、孤独感の強さが2人の温度差を生んでいるであろうことを連想させる。
しかしながらネビルが本質的に精神に支障をきたさずにこられたのは、飼い犬のサムの存在と、なんとしても治療薬を作り人類を救済しようとする使命感、救済できるという僅かな希望があったからだろう。
そしてネビルはアナとイーサンに血清を託し、2人を守るため自らの命を犠牲にする。
まさしくアメリカ的ヒーロー像であると同時に宗教的な自己犠牲的救世主の姿が見てとれる。
頻用されるテーマにも関わらずなかなかの作品に仕上がっているのはやはり孤独な生活、人の消えた大都市の描き方が見事だからだろう。
大体こうした状況を描くと退屈な作品になりがちだが、そこを飽きさせずに見せるのは素晴らしい。
一方で感染し闇の住人/ダーク・シーカーとなった者達の顔がほぼ同じであるのはやや残念ではある。
現代のグラフィックならこの辺は改善可能だろうか。
なかなかの作品をだったと思います。