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美しき運命の傷痕のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

美しき運命の傷痕(2005年製作の映画)
3.3
「デカローグ」のクシシュトフ・キェシロフスキ監督が、ダンテの「神曲」に想を得て練っていた遺稿(「天国」「地獄」「煉獄」という3部作)の第2章「地獄」をダニス・タノヴィッチ監督が映画化。
フランスの人気女優が共演も話題に。
原題:  L'Enfer  (2005)

22年前に起きた不幸な出来事によって幼くして教師だった父親(ミキ・マノイロヴィッチ)を失い、それが今なお暗い影を落としている3姉妹と母親の物語。
愛の地獄でさまよい傷つきながら、現実を生きぬく姿を描く。

その、3人姉妹。
①写真家の夫ピエール(ジャック・ガンブラン)との間に2人の子どもがいる長女ソフィ36歳(エマニュエル・ベアール)は、夫の浮気に苦悩を募らせ、
②恋人がいない二女セリーヌ32歳(カリン・ヴィアール)は、身体が不自由な母親の世話を一人で引き受け、孤独で寂しい日々を送り、
③妻子がいる大学教授フレデリック(ジャック・ペラン)と不倫関係にある大学生の三女アンヌ(マリー・ジラン)は、相手が別れを求めていることに悩む。

やがて、22年前の新事実を知った娘たち3人が久々に集まり、母親(キャロル・ブーケ)元へ向かう…。

~その他の登場人物~
・母親と同じ施設に入居しているルイ (ジャン・ロシュフォール)
・二女セリーヌに近づく若者、セバスチャン(ギヨーム・カネ)
・長女の夫の不倫相手(マリアム・ダボ)
・二女セリーヌの寝顔を眺め好意を寄せる車掌
・三女アンヌの友だち

「運命は言葉で書けるが偶然であれば無理だ。偶然から文学は生まれない。
私の存在は運命なの?それとも偶然?」

「パパ。既婚者との恋愛への忠告を」

「行った理由を知りたい?私自身を辱しめるためよ」

「王女メディアは、夫が裏切るまではよき母よき妻として、完璧な主婦でした。メディアは嫉妬し、夫に復讐するため犠牲を強いるのです。我が子を殺します。夫の愛していた子どもを殺す。復讐です。エウリピデスが描く彼女は、感情を爆発させ、子どもたちを切り刻みます。悲劇とは人間の本質や社会における立場、他者との力関係を問うものです。夫が被る不幸は偶然ではありません。意味ある不幸です。自分の行いと不幸の関係性に気づくのです。悲劇の根源は人間の脆さ。主人公が苦悩するのは、神と対話するためです。現代ではあり得ません。信仰心がないからです。現代は神を忘れた時代です。せいぜい深刻な劇を演じるしかありません」

「私は何も後悔していない」
  Je ne Regrette rien

キャロル・ブーケ演じる母親が"コワイ"
キェシロフスキ監督が撮ったら「デカローグ」や「トリコロール」のような素晴らしい作品になっていただろう。残念。
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