TAK44マグナム

ゾンビ/米国劇場公開版のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ゾンビ/米国劇場公開版(1978年製作の映画)
4.0
世界中の人々に「ゾンビってどんなの?」と訊いたら、まず殆どの人が本作に登場するようなゾンビの特徴を答えるであろう・・・つまり、ゾンビと呼ばれるモノのスタンダードを作り上げた、偉大な映画です。
正確には前作となる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」があるわけですが、あれは白黒映画だし、何よりゾンビのビジュアルがまだまだ白塗りメイクばかりでした。
カルト映画として、文化的な側面からも重要な映画であることは間違いないですが、やはりゾンビを一躍メジャー(モン)スターに押し上げたのは本作だと言って差し支えないでしょう。
なにしろ、血や臓器が飛び散る凄惨なゴア描写がありますし。
ゾンビメイクは、まだまだ単に青白いメイクだけだったりしますが、それでも前作よりかはゾンビっぽいです。
同時期には他にもゾンビ映画が何作か作られていますが、本格的に(現在に通じる)ゾンビ映画の夜明けがやってきたのでした!

本来は、ブードゥー教が麻薬によって人を自在に操り、生気と思考の失せた奴隷になり果てた姿をゾンビと呼称していたわけです。
しかし、「(リビング)デッド=生ける死人」なので、正確に言うとゾンビとリビングデッドは違うモノであり、登場する死人たちは(ブードゥーにおける)ゾンビでは無いということになってしまうわけですが、現在では死人が動いて人を喰っていれば、それ即ち「ゾンビ」だという事が国際標準と化しております。

ジョージ・A・ロメロ監督は、社会風刺的な意味合いを常に自作にこめる事で知られていますが、本作も消費社会を皮肉った内容になっていますね。
世界中でゾンビが大量発生し、スワット隊員たちが逃亡した先が郊外のショッピングモール。
そこなら食料や物資にしばらく困ることもないというわけ。
だけども、何故かゾンビたちもワラワラと集まってきます。
どうやら、生きていた時の生活習慣からか、ショッピングモールへ行きたくなってしまうみたいなんですね、ゾンビになっちゃっても!
やがて暴走族が乱入してきたことから、束の間の平穏も呆気なく終わりを告げます。

何の解決もなく、どんよりとしたラストは、バージョンによっては無駄に希望を持たせるセリフで終わったりしていますが、結局のところ世界はゾンビたちに埋め尽くされる運命であることが、更なる続編である「死霊のえじき」で語られます。

かつて、秦の始皇帝は「永遠の命」を欲しましたが、彼ほどの覇者でも、それは叶うはずもない夢でした。
人のもつ果てしない欲望の極致、それがゾンビだったとしたら・・・?
きまぐれな神が、人類の望みを叶えてくれた結果が、地表を埋め尽くすゾンビたちなのかもしれませんね。


テレビ放送、レンタルビデオ、レンタルDVDにて