菩薩

穏やかな生活の菩薩のレビュー・感想・評価

穏やかな生活(1997年製作の映画)
-
ソクーロフ版のポツンと一軒家状態、侘び寂びが効きすぎて目と鼻にツーンと来る、特に寂びの方が強烈。タイトル通りの穏やかな生活にカメラも静かに寄り添っていくが、唯一の訪問者たる歳末助け合い托鉢がただの圧力団体による脅迫まがいのカツアゲ状態で非常にスリリングである。針仕事で生計を立てているうめのさん、厳寒の季節にありながら少し曲がった指を火鉢の熱で温め作業に勤しむ姿に何故だか涙が出る。『オリエンタル・エレジー』とかなり似た作りでありながら、こちらはしっかりとした実体を捉えている。礼に始まり礼に終わる別れの儀式、丁寧な生活から紡ぎ出された歌の美しさ、ソクーロフが見つめる日本は儚げながらも美しい。
菩薩

菩薩