3月18日はフランスの名匠ルネ・クレマン監督のお誕生日であり、
また昨日3月17日は彼の命日でもあります。
生きていれば今日で105歳に。
『禁じられた遊び』や『太陽がいっぱい』など珠玉の名作を残した50年代は間違いなく彼の最盛期に当たりますが、
一方で60年代後半からはもっぱらサスペンス映画に傾倒し、その転換点に相当するのが本作『雨の訪問者』であります。
ムーディーなフレンチノワールとアメリカで一番男臭い俳優チャールズ・ブロンソンを組み合わせ、
異質なロマンチック・サスペンスを作り上げたクレマン監督。
実質的な主役は白服を纏うマルレーヌ・ジョベール(女優エヴァ・グリーンのお母様!)が務め、
不条理な事件に巻き込まれ、男たちには終始虐げられるという、なかなか可愛そうな奥さんを好演します。
その姿は不思議の国で右往左往する少女アリスようでもあり、冒頭にはルイス・キャロル同作の引用も。
サスペンス劇と平行し、抑圧された一人の女性が徐々に解放されてゆくという伏線は多少強引ではありますが、
その一端を担うブロンソンの演技は大変魅力的であり、
ストーリー云々よりも彼の無骨な荒々しさと包容力満載のセクシーさが一番の見処かも知れません。
大塚周夫版の吹替えも素晴らしいし。
キーマンとなる人物が実はマック・ガフィンという名前で、その名の通り"マクガフィン"に過ぎないという仕掛けにもニヤリとさせられます。
フランシス・ レイの甘美なスコア集が本作を一際情感あるものに高めてくれた逸品。
現在、国内ソフトは廃盤でべらぼうに高値が付いていますが、とうとう5月に再発されるそう!
ただし次回は森山周一郎版の吹替えしか収録されないみたいなので、買い替えも悩みどころです。