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喜劇 初詣列車のakrutmのレビュー・感想・評価

喜劇 初詣列車(1968年製作の映画)
3.6
瀬川昌治監督、渥美清主演による「喜劇列車シリーズ」3部作の第3作。渥美清扮する上越線急行列車の車掌が車内で幼馴染の女性に出会い、家族に内緒で彼女の行方不明の弟を探すという行動が巻き起こす騒動をユーモラスに描いている。正月にテレビで放映されていたのを若い頃によく見ていたが、U-NEXTで見つけたので思わず鑑賞。

個人的には、喜劇列車3部作の中では、本作はイマイチである(評価順に『喜劇団体列車』>『喜劇急行列車』>『喜劇初詣列車』)。その理由は以下のような点であろう。
・3部作すべてでヒロイン役の佐久間良子の魅力がイマイチ。芸者という役柄もあってか、清楚な感じが影を潜めて、やや暗いキャラになっている。
・前2作に比べて渥美清が演じるキャラのダメダメ感が弱い。既婚で子供もいるという設定も、ヒロインとの空想と現実のギャップから来るコメディ感をイマイチにしている。
・ストーリーに列車があまり活かされておらず、映画の大部分は東京で展開するので、列車シリーズとしての魅力に欠ける。でも、当時の新宿の雰囲気などが見れるのは貴重。

そうはいっても、渥美清をはじめ多彩な出演者が華を添えていて、喜劇として十分に楽しむことのできる良作である。映画俳優としては晩年であるが、その後はTVドラマや司会として活躍する庶民派イケメンの川崎敬三、デビューしたばかりの喜劇俳優・コメディアンの小松政夫、喜劇女優・コメディエンヌとして人気絶頂期の若水ヤエ子など、見どころは多い。その他にも、財津一郎や大泉滉が前衛芸術家として顔を出している。一方で、役柄もあってか前2作に比べると佐久間良子の魅力がイマイチであるが、前作に引き続き出演した城野ゆきは魅力的であった。

なお、映画・男はつらいよシリーズの前身となるテレビドラマ版『男はつらいよ』が放映されるのが、本作が公開された1968年の秋である。
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