このレビューはネタバレを含みます
寅さんの礎ここにあり。マドンナとの恋愛、マドンナの肉親捜し、虚勢を張って生きている肉親、、のちの『男はつらいよ』で幾度となく登場する設定が本作には詰まっている。
本作を制作したのは東映だが東映に喜劇は合わないと言われ、以後、渥美清は松竹で制作される喜劇に多数出演することとなる。合わないと言われたとはいえ、東映を追い出されたわけではなく、東映と松竹のお偉方がぜひにとお互いに納得した状態でバトンを受け継ぐことになったのだ。
そういう歴史を鑑みると本作のクライマックスで登場した夢の世界や初詣の様子が『男はつらいよ』シリーズでは冒頭に観ることができ、本作からきちんとバトンが繋がれていることがうかがえる。スタジオを超えて、作品を超えて、作品を守ろうとする姿勢に当時の映画人の粋を感じる。本作それ自体の出来もそうだが、それ以上に当時映画を作っていた人々の心意気を強く感じる一作だった。