ゴン太くん

素晴らしき哉、人生!のゴン太くんのレビュー・感想・評価

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
5.0
これがもしそのまま現代の新作として発表されたとしたら、SNS上でさまざまな批難が飛び交うのではないかと思う。「生き方や苦悩は人それぞれであって、本作のように規定される筋合いはない」と。それをうがった見方だと応酬する向きもあるかもしれないが、しかし個人の経験から映画を語ることも大切であるから、時代を経てこうした意見が出たとしても、不思議ではないと思う。そうしたメッセージが不朽なものかという議論は置いても、脚本は非常に滑らか。何度も訪れる大きな選択、自分で選んだはずの人生への迷い、そして自分がいなければどれだけ楽だったか…。生きる意味へのひとつの回答として「あなたがいることで、必ず誰かを幸せにしている」というものがある。本作はそれを極大に可視化したものだが、自分ではどうにも気づきにくい。もうひとつのイフの選択として、もしヒトラーが赤ん坊のとき目の前にいたら、あなたは殺せるか、というものもある。そんな難しく考えるべき映画ではないのかもしれないが、本作を否定する意味ではなく、いろいろなことを考えさせられるパワーが秘められている。大変感動しとります。