ダイナ

素晴らしき哉、人生!のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ファンタジードラマ映画。二級天使クラレンスが自殺を図るジョージ・ベイリーという男を救う使命を大天使から受け…という話。特徴的なのはこの映画はほとんどジョージベイリーが絶望の淵に立つまでの人生を描いている所。アマプラでの鑑賞になりますが、2時間10分に対しジョージの飛び降りに至るまで1時間38分弱。回想は通常サクッと本編の補足として描かれるのが一般的ですが、長尺割かれたジョージの半生の濃密さによりとても感情移入できるような作り。まるでベルセルクの黄金時代編みたいだあ。

天使の存在が重要である本作。光で会話を表現するアナログ手法が面白いです。そして回想を一旦止めて「なぜ停止を?」という演出、この時代からこのようなユニークなアイデアが取り入れていたのかと唸りましたね。そして序盤から上位的存在を出すという構成は結構理にかなっているなとも思いました。

A)通常の時系列
・ジョージ飛び降りまでの人生→クラレンス登場、別の世界線へ誘う
10分くらいの回想でファンタジー展開が大部分を占めるストーリーであればさほど違和感はありませんが、ジョージの人生を丁寧に時間をとって映している作品なわけで、1時間半近く半生見せられてこれから自殺してしまう!って時に急に天使が出てきたら一気に現実感が崩れて冷めてしまうように思えます。

B)本作の時系列
・大天使がクラレンスへ指令→ジョージ飛び降りまでの人生→…
最初に天使の存在を明かしてからの助ける男はどういう人間だったのか、なぜ死のうとしているのか?と人生を覗く本作の構成。序盤から天使が存在する世界観だと分かることで、終盤に差し込まれるファンタジー展開も唐突感はなく、なんなら観客は「待ってました!」と天使の活躍に期待するでしょう。要は前もって「ファンタジー要素あるから!」と釘刺している作りのためすんなりと受け入れられるようになっています。

幸せや絶望を全力で表現する人間讃歌映画。ヒッチコックのサイコでも思いましたが大金の持ち歩きは本当危ない。振込システムの利便性が追求されていく源流を半世紀前の作品に見ました。別世界線で性格がガラッと変わる人達というのも面白くもあり人は環境に依存するというなんとも悲しい本質を描いているようにも思えます。またラストの展開、考え方を変えてみると誰にも相談しなければそのまま死ぬのみだったという。逆境時の対応であったり、自分の行動が他者にどう影響しているかを見つめ直す機会を与えてくれる、日常生活に落とし込める教訓が得られる一作。
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