キノ

素晴らしき哉、人生!のキノのレビュー・感想・評価

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
4.8
1946の名作。序盤は古くさく中盤は長い(途中寝てもOK)が、最後には観客に「あるプレゼント」を持って帰らせるクリスマスムービー。

何度も見たが、最初は「人に優しく」と願い、今は「見逃している誰かの自分への優しさ」に想いをはせる。そんな万人に見てほしい作品。

時代補正ありでショーシャンクの次点。テーマはクリスマス・キャロルと同様に、金儲け v.s. 自己献身、大金持ち v.s. 愛される人。中島みゆき名曲「糸」の「ささくれ」と、ドラえもん名言の「人の幸せを願う」の両方が後半でくっきり描かれる。

奇抜な冒頭だが、観客を天使目線にする効果がある。この天使の助け方が秀逸で、肝心な時いないポンコツ感も良い。いないのに存在感がある脚本・演出は凄く、ハッピーエンドの手本。

で、「プレゼント」とは何か、ですが・・・

↓以下ネタバレ



↓プレゼント=翼と、私はおもってます

何かを与えられる映画は多い。本作からは笑顔や多幸感など様々な人生経験を与えられるが、一言で言えば「翼」だと思う。本作は二級天使の観客たちに翼を与え、一級天使にしようとする。

大金持ちでも権力者でもスターでもない、ただ善良な市民が歩んだ「人生の素晴らしさ」は、翼を持たぬ天使には見えぬ。それを、序盤の薄ぼんやりした演出に思う。さらにラストで不在の天使も上手い。その存在感を寄付の奇跡に描きつつ、画面に姿は見せない事で観客の心の中に存在させる。その心の中の天使に翼を授けるから、観客は一級天使になれると思う。

町が平穏で、道が綺麗。

そこに何が見えるかが、翼の有無で分かれる。
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