ミサホ

野良犬のミサホのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
4.0
久しぶりに黒澤作品に戻ってきました。
おもしろかった。

若手の刑事の村上(三船敏郎)は、満員のバスの中で、拳銃を盗まれてしまう。すぐに上に報告するが、気が気でない。
その拳銃で事件を起こされたら堪らない!

村上はなんとか解決しようと、ひとり奔走する。そんな中、強盗事件が発生。銃弾の旋条痕から使われたのは村上の銃のようだ。

責任を感じ、辞表を出すが上司には受理してもらえない。反対に「ものは考えようだ。不運は人を叩き上げるか押し潰すかのどちらかだ。君の不運は君のチャンスだ」と上司は村上を事件の担当に。

そうして村上は相棒となる腕の良い刑事・佐藤(志村喬)と出会う。刑事としてはいささか未熟な村上を佐藤は捜査を通じて優しく導く。

黒澤作品を観ていると、なんだかカウンセリングを受けているような、人生の先輩から大事なものを教わっているような気分になる。本作で言えば、先の上司だったり、先輩刑事の佐藤だったりする。

佐藤は、世代の違う村上の話をじっくり聞きながらも、刑事として大事なものを教える。村上は犯人に感情移入するきらいがある。しかしそれではだめなのだ。

ひとりの狼のために、何匹もの羊が不幸になる。悪いやつは悪いのだ!そうやって佐藤は、村上に意識改革を施す。それを今度は村上が、捜査の過程で出会い、犯人を庇い続ける踊り子のハルミに施すのだ。

その流れも気に入った。
そうやって世の中を少しずつ良くする術が伝授されていく。

終盤、やっとの思いで犯人を追い込む。しかし、まだまだ甘さが出るところなどは、思い上がりをたしなめるような、何事も簡単じゃないよというような展開がとても良かった。

とてもおもしろかった。
ミサホ

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