Supernova

野良犬のSupernovaのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
4.1
「ホシは?」
「今夜は曇るから出ないよ。」

いい作品だけど絶妙に歯切れが悪い。特に最初の闇市でウロウロするシークエンスと球場のところがやたらと冗長だから飛ばしたくなったくらい。撮った素材全部使うんじゃなくて、その中から光る部分を抽出するのが編集作業だから、本作はそれが適切に行われていなかったって事だね。編集の大切さがよくわかる作品。一人挙げてからは話の進みが早くなるからそこまでは辛抱。

三船演じる正義感の強い新米刑事と志村喬演じる手だれのユーモラスな刑事のバディもの。定番だけど最高に痺れる関係性。

劇伴がムードメーカーとして素晴らしい。熱気に包まれた球場の雰囲気に反してあえて場面にそぐわない不穏な音楽を鳴り響かせるシーンがすごく好き。刑事達の不安とか焦燥感が直に伝わる。

こういうバディものには点で弱いから序盤を除けば大満足。戦争の影を感じる大戦直後の日本の話としてものすごくよく出来てる。アプレゲールというものを初めて知った。犯人と刑事の分かりやすい対比が良かったな。

黒澤明は暗くてシリアスな題材を取り扱うけど、なんだかんだで性善説のマインドを持った人ってのが最高に日本人と相性が良い。
希望のない世界で映画の中くらい希望を見せてくれって人が多いだろうから、そういう人を決して裏切らないという点で信頼できる。

良かった。志村喬大好き。
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