Ginny

野良犬のGinnyのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
3.7
何言ってるか全然聞こえないんです…( ;∀;)

でも展開で引き込まれる良さはありました。
ただどうしてもお気に入りの黒澤映画の『悪い奴ほどよく眠る』『天国と地獄』に比べると物足りなさ(あと聞き取りにくさ……チーン)を感じてしまいました。

三船敏郎の線の細さが意外すぎて驚きました。晩年のものばかり見てきたものですから。

いいな、と思ったのは、映画のBGMが流れていると思ったら、映画のシーンの中に実際に演奏している人が出てくるところ。
『セッション』とか『バードマン』でも好きな演出です。
映画の中の世界への没入感を誘う感じがして好きです。

後は、遊佐の離れの家に行った際のカメラワークですね。
窓にカメラが移動したところ、遊佐の姉が窓を明け、中にいる志村喬演じる佐藤刑事との会話にそのまま自然とうつっていくところが素晴らしくて感激しました。

そして、村上刑事が遊佐を突き止めるシーン。村上がそれまで気持ちが急いてしまうことで失敗をしてきたことから落ち着いて落ち着いてとゆっくりと見定めるシーンはもう見てるこっちの心臓もバクバクもんでしたよ。

佐藤刑事(志村喬)と村上刑事(三船敏郎)が二人ゆっくりと顔を突き合わせて会話するシーンは味わい深い内容を話してますね。
善悪を綺麗すっぱり教え込む感じではなく逡巡…は違うかな?悩み、考え、葛藤する感じに好印象を抱きました。

慟哭が凄いですね。
ハルミも、遊佐も。
動機としてはしょうもないというか、それで道を踏み外さなかった村上が目の前にいるもんだから、小物に見えもするんですが、そうでない気も。その人達にはその人たちの周りが分かり得ない苦労苦しみがあってと同情しそうになるところに頭に思い浮かぶのは佐藤刑事のフラットな態度と言葉ですね。

映画を見て、感想を書くのが怖いよ。
人間の薄っぺらさがバレてしまう、暴かれてしまう、そんな映画をつくりますね黒澤監督は。
彼が映画の中で描くものは、リアリティがあり、人間性を抉りだします。
黒澤監督の素晴らしい映画手法もそりゃあたくさんあり映画を支えていますが、胸に残るこのよどんだもの、でも生きていく上で無視できないもの、目を背けたいけど、事実そこに存在するもの、そういうものを暴き出してしまうところも良さのひとつなんじゃないでしょうか。
『天国と地獄』のどうしようもない、謂れのない嫉妬とか『悪い奴ほどよく眠る』の救いのないエンドとか…。

今の日本も、だいぶ腐ってますよ。
みんな選挙行きましょうね。
Ginny

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