大ヒットを記録しただけのことはあり、葬式という暗い題材を使いながら、軽快な語り口で伊丹監督のカラーを楽しめる作品。
初監督作ということで、ちょっと硬さがあり、この後作られた作品のようなハジケ方が無いのだが、伊丹監督の原点はここにあり、それを認識できるのは嬉しい。
また、出演している役者陣が名優が多く、ここも見どころの一つ。
一応山崎と宮本が主役なのだが、菅井きんの名演は見事で、彼女を主役として本を書いても良かったぐらいだ。
また、ちょっと嫌われ役の大滝秀治もコミカルだが引き付ける良い演技をしていて目が離せない。
もちろん高瀬春奈のサービスシーンも見逃せない所だ。
住職役の笠智衆にはもっと活躍してほしかったな。もったいない。
全体的には「葬式あるある」と良い役者でできている作品で、サッと流して観ることもできるし、じっくり噛みしめることもできる良作。
ただ、これ一発で終わっていたらこんなことは言わないのだが、この後の名作群を見ると、やはり頂点ではない作品。
余談。
笠智衆が出てくると、脳内であの独特なしゃべり方が再生されてしまう。
でも、今作では全く普通。というか、ほとんどお経を唱えているもったいない使い方。
あの、独特のイントネーションを聞きたかった。
でも、実はあのしゃべり方は小津安二郎が作り上げたそうだ。
笠はインタビューで
「小津組では自分じゃ何をやっているのかちっとも分からなかったですけど、小津先生の言われるままに(笑)。他力本願っていうのか、みんな監督のいう通りです。科白の上げ下げから、動きまで全部。僕だけじゃなく、全員そうですから。撮影の前に全員集められて、科白の稽古するんです。ホンに高低を書き込んで、音符みたいに覚えるわけです。その通り言わないとOKにならないから、もう必死で(笑)。」
と言っている。
もちろん笠独特の熊本訛りもプラスされてあの節回しなのだろう。
好きな曲を何度も聴くように、何度も聞きたくなる台詞回しだ。