こたつむり

サムシング・ワイルドのこたつむりのレビュー・感想・評価

サムシング・ワイルド(1986年製作の映画)
3.7
♪ 世界の果てまでずっと
  何度もKISSをして
  走る事も歩く事も好きに風を受けよう

コメディって定義が難しいですよね。
本作は『腹筋崩壊!コメディ映画100』というムックで知ったのですが、笑える場面は皆無。百歩譲れば、ロマンティックコメディと言えますが…。

物語中盤からコロッと毛色が変わりますからね。良く言えば“先が読めない”ので落ち着きません。

しかも、レイ・リオッタの不穏な雰囲気が抜群。眉毛を持ち上げた顔がキュートながらにサイコっぽくて、いつ破裂するか分からない爆弾みたいにスリリングなのです。主人公を演じたジェフ・ダニエルズを完全に食っていました。

後から知りましたが、彼にとってデビュー作だったんですね。もう少し、過激な演出があれば知名度がググッと上がった気がします。

ちなみに仕上げたのはジョナサン・デミ監督。
このあとで『羊たちの沈黙』を手掛けた安定感は本作でも健在。少しだけ展開がゆっくりに感じたのは、80年代という時代を考えれば仕方ないのでしょう。

また、音楽に関する演出もお洒落でした。
80年代と言えばMV全盛期なのにグイグイと押し付けてこないところが上品なのです。ダンスの場面なんて物足りなさを感じるほど。これを磨き込めば『パルプ・フィクション』のような雰囲気になるのでしょう。

まあ、そんなわけで。
保守的な主人公が自由奔放な女性と出逢って人生が変わる物語。劇中でも語られるように、死んだライオンよりも生きている犬。心がトキメクままに生きる姿が羨ましくなる作品でした。

ただ、僕はゴリゴリに保守的な牡牛座。
地に足がついた人生が性に合っていると理解していますので…冒険は映画の中だけで十分。同系統の作品と比較したら地味ですが、本作で十分に欲求を満たせるのです。

だから、美人さんは誘惑しないでくださいね。
(最初から眼中無し…なんて野暮なことは分かっているので慎むこと)
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