TaiRa

都会のアリスのTaiRaのレビュー・感想・評価

都会のアリス(1973年製作の映画)
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男と子供と不在の母親ってのはヴェンダース当人の『パリ、テキサス』と共通。こっちの方が可愛くて好き。

ヴェンダース曰く失敗作だった前作『緋文字』における唯一の収穫が、出演者のリュディガー・フォーグラーとイェラ・ロットレンダーの好ヴァイブスってことで、その要素メインで作ったロードムービー。アメリカからオランダ経由でドイツへと、偶然出会った少女連れての当惑紀行。人物から作った映画らしく、フォーグラーとロットレンダーの魅力は素晴らしい。おしゃまなアリスとホトホト疲れたフィリップの関係性が徐々に変容するのも良い。ただの臨時保護者から友人になり、時に父娘、果ては倦怠期のカップルみたいに。二人のやり取りで紡ぐ映画。ポラロイド写真みたいにじっくり見えてくるものがある。余談だけど、0時に消えるライトアップを息で吹き消す仕草が島耕作の元ネタだって思ったりした。トイレで泣いてるアリスにドイツの地名列挙するとこも好き。見守るおばさん込みで。ヴッパータール空中鉄道を撮りたい為に選んだロケーションのチョイスも良い。カフェでアイス食いながら窓越しに鉄道見上げる不貞腐れたアリスが何かぐっと来た。当てのない二人に訪れる呆気ない解決に、うら寂しくも爽やかな結末が最高。制作前に試写で『ペーパー・ムーン』観て、ネタが被ったと落ち込んでたヴェンダースに、サミュエル・フラーが「筋変えりゃ良いだろ」と励ましてくれたというイイ話も。
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