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都会のアリスのmanamiのレビュー・感想・評価

都会のアリス(1973年製作の映画)
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ヴィムヴェンダース作品鑑賞2作目。
ラジオに悪態をつき、テレビにはブチ切れ、ただでさえメンタル不安定な上にまたしてもショックな出来事に見舞われるフィリップ。人生に行き詰まって母国ドイツに帰ろうとしたら、さらにとんでもない事態に巻き込まれることとなる。
帰りたくないのに帰らざるを得ない青年と、帰りたいけど帰るところのない少女、必要とされたい二人のロードムービー。
開始直後に出てくる、ジュークボックスを動かす男として出演してるのは監督らしい。そして同年公開の『ペーパー・ムーン』を試写で観た監督が、よく似たストーリーにショックを受けて後半を改変したのだとか。本当はどう終えるつもりだったのか、幻のラストも気になるところだわ。
とは言え今作も見応え十分。飛行機、電車、バス(モノレール?)、レンタカー。互いに通訳を担いながら、二人の旅は続く。エンパイアステートビルのあるニューヨーク、そしてアムステルダム、ドイツ。
彼女が撮ったポートレートに彼の顔が映り込むのは単純にかっこいいし、9歳の少女との道程で31歳の青年が自分自身を取り戻していくことにも重なっている、印象的なシーンね。他にも全編通してポラロイドカメラがキーアイテムとして使われている。
そしてアリスのキャラがとんでもなく良い。愛想がなくて口が悪くてワガママで、それなのに妙に人懐こいところもあって。ませてるようで、年相応の反応も見せたりして。ずっとニコニコしてる素直な子より、こういうちょっと難しい面のある子の方が、心を開いたりなついたりしてくれると嬉しいって、あるあるよねぇ。
人生に詰んだ美少女は、赤の他人のおっさんと旅する選択をした、って話。モノクロの良さももちろんあるんだけど、風景や二人の表情をもっと感じとりたくて、カラーでも観たくなる。

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