ミシンそば

都会のアリスのミシンそばのレビュー・感想・評価

都会のアリス(1973年製作の映画)
4.1
今年の初めに観た、ヴェンダースの最新作「PERFECT DAYS」は、思った以上にこの初期キャリア作品をなぞっていた。
今日初めて、最初期のこの作品を観たからこそ、こんな感想を抱くのだろう。
フォーグラー演じるフィリップを平山、アリスを平山に関わる若造どもとは言わないが、ポラロイドカメラや、中盤の彼の苛立ちなんかにそう言った要素を感じた(と同時に、この当時は当然ヴェンダースも若いから、まだ語り過ぎな部分も多いなとも)。

「まわり道」、「さすらい」へと続く、ロードムービー三部作最初の一本。
アメリカを旅しながら紀行を書くドイツ人ライターのフィリップが、納期に間に合わすことが出来ず、帰国することを選ぶも空港がストで便がない。
空港で同じくドイツに行きたい母娘と出逢って、アムステルダムまでの便でアメリカを出国することになるが、その過程で母親の方とは合流出来ず、娘アリスのあやふやな記憶を頼りに祖母を探しながらドイツの町々をレンタカーで廻っていく、まさしくロードムービー。
年不相応にませてて多感な少女アリスと、人と会話をしていてもそれらがほとんど独り言な空虚な男フィリップの、凸凹未満な長距離旅。
ヴェンダースの通す道筋が、このころからそれほど変わっていないことを再確認できた稀有な作品だった。
自分の中でヴェンダース作品は「パリ、テキサス」と「PERFECT DAYS」の双璧なのだが、本作もその次くらいには好きだ。
疲れている時に寝落ちしない程度に気を張って観る、ゆっくりとしたロードムービーはやっぱいいもんだな。