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都会のアリスのaiiiiiのレビュー・感想・評価

都会のアリス(1973年製作の映画)
5.0
ヴェンダース作品で1番好きです。さまざまなシーンを思い出しては心が駆り立てられる。 人との会話ですら「独り言」を重ねるしかなくなった男。言葉を綴ることが出来なくなった彼は、写真の中に「現在」を求める。 「独り言とは独りで聞くことだな」という彼のセリフが沁みる。彼にとってアメリカの旅は、彷徨いでしかなかったのではないだろうか。

そんな時出会ったアリス。仕方なく始まった彼女との彷徨いが、次第に二人の「旅」に変化してゆくように思えた。
アリスのまっすぐな彼への言葉達が、次第にくたびれた彼の心に変化をもたらす。
「自分のことはわからないものよ」
といい彼を撮るアリス。彼女の言葉がひとつひとつ心に響く。
独り言の世界、己の中でのさまよいから、彼がふっと抜け出すシーンでもある。
出来上がった写真に、主人公とアリスの顔が重なる。
この瞬間がたまらなく好きだ。

アリスと出会ってから、写真を撮らなくなった彼がストーリーの最後の方でアリスを撮るシーン。
ファインダーをのぞく彼の表情がとても良く、グッときながらも救われたような安堵の気持ちになった。
それぞれの場所を探していた二人が、それぞれの目的地を見つける。
二人の人生が交わり、そして列車にのってまた平行線上に進んでゆく。
とても心地よい多幸感に包まれるラスト。
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