南半球

モロッコの南半球のレビュー・感想・評価

モロッコ(1930年製作の映画)
3.9
向田邦子のエッセイ(「ないものねだり」)と、美輪明宏の天声人語と、LGBTヒーローの文脈で立て続けに言及されていたので鑑賞。ディートリッヒの声が良い。この映画が日本で公開された際に、初めて台詞をスーパーインポーズでプリントに焼き付ける方式を採用したとのことなので、もしそれが無ければ活動弁士がこのディートリッヒの声をカットして解説していた可能性もある。この映画を皮切りに仕事を奪われていった弁士達にとっては複雑な映画ともなったようだ。
バビロンでも引用されていたシーンはクイア映画史としても必見。この時代にバイセクシャルの女優がタキシードを着て女性にキスし、それが拍手喝采で迎えられるシーンがあるというのは興味深い。
三島由紀夫はディートリッヒを「西洋のおかめ」と呼んだそう。いわゆる美形とはまた違う独特の顔立ちではあるが、服装や仕草・表情が醸す無二の妖艶さが素晴らしい。
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