5〜6年おきに見返しては「やはりいい」と再確認する作品。本作の鑑賞は3回目で、今回は3部作を通しで鑑賞した。
警察v.s.マフィアのスパイ対決。各組織に属する有能な人物が相手側の一味となり、信頼を勝ち得るほど上手く活動する。そこで「善」と「悪」の入れ替えが発生している。
スパイもののハラハラ感はもちろんあるが、この「善と悪の入れ替え」による心の葛藤を丁寧に描いているため、単なるスパイアクション映画ではなく、奥行きのある人間ドラマ、フィルムノワールとなっている。
香港映画の映像美、「踊る大捜査線」のような警察内部のやりとりと友情、「アウトレイジ」のようなヒヤリとする残忍さと「ゴッドファーザー」にも通ずるマフィアのファミリー観が弦楽器のように奏でられながら終わりに向かう3部作。
1、2、3の中で一番すっきりしているのがこの1で、本作でわからなかったことは2と3で明かされるのだが、明かされなくてもよいくらいの高い完成度でまとまっている。
この脚本、この演出あってのこととは思うが、役者陣もキャラが立っていて「(次作で)また会いたい」と思える人ばかりだった。深読みだが「善か悪かをはっきりさせない」演技指導があったのかもしれない。